ロックあり、アイドルあり、お笑い芸人ありのジャンルレス
滋賀県の野外イベントといえば、毎年、35万人もの観衆を集める「びわ湖大花火大会」が有名だが、近年、この伝統行事に負けないほどの存在感を放つ催しがある。それが「イナズマロックフェス」。滋賀県出身の西川貴教さんが、2009年に立ち上げた音楽フェスである。
その名のとおり、ロックフェスではあるのだが、「イナズマ」の特長は、ジャンルレスな親しみやすさにある。人気ロックバンドのライブはもちろん、アイドルグループのパフォーマンスあり、お笑い芸人のステージありと、ロックファン以外でも楽しめる。
例えば、10回目となった昨年は、LUNA SEA、ゴールデンボンバー、欅坂46をはじめとする豪華な顔ぶれが並んだ。お笑い陣も、霜降り明星、ひょっこりはん、トレンディエンジェル、アキラ100%など、人気者ばかりだ。
今年は、9月21日(土)と22日(日)の2日間開催で、ゲスの極み乙女。、UVERworld、ももいろクローバーZ、日向坂46などの出演が発表されている。
もちろん、西川さん自身も、初日はソロ・アーティスト西川貴教として、2日目はバンドabingdon boys schoolのボーカルとしてステージに立つ。
無料のエリアも驚くほど充実
これだけのビッグネームが、大阪でも京都でもなく、滋賀にやってくるのだから、地元で話題にならないわけがない。
コンセプトは「お茶の間フェス」だと、運営スタッフは明かす。
テレビでおなじみのスターたちが出演することで、コアな音楽ファン以外の人たちにも、「あの有名人が生で見られるなら、ちょっと行ってみようか」と思わせる。そして、これほど豪華なイベントが滋賀が行われているということが、地元の人たちの誇りになる。
狙いはそこにあるのだ。
“地元ファースト”の精神は、チケットがなくても入れる「入場無料エリア」の充実ぶりにも表れている。地元の絶品グルメの販売、若手アーティストのライブ、ご当地キャラのステージなど……。幅広い年齢層に対応した盛り沢山のプログラムが、びっしり組み込まれているのである。
採算度外視とも思えるこうした“おもてなし”の背景には、「故郷・滋賀の人たちに喜んでもらいたい」という西川さんの熱い想いがある。それがこのフェスを10年存続させてきたと言っても過言ではないだろう。
「『ロックフェス』と謳っていますが、要するにお祭りです。音楽だけではなく、食べ物の屋台もあれば、花火も上がる。僕自身、仕事が忙しく、夏祭りも音楽フェスもなかなか行けないので、自分がほしいものを全部ここに詰め込みました。出演者の方々には、地域のみなさんのためのイベントだと説明して、オファーをしています」
慎重に言葉を選びながら、ていねいに説明をする西川さん。バラエティー番組などで見せる明るいキャラクターとは違う、まじめな人柄が窺える。