滋賀にミュージシャンを呼びたい
「デビューしてから、紆余曲折ありすぎましたが(笑)、いろんなことをやってきたからこそ、つながりができた。『イナズマ』にお笑いの方々に来ていただけるのも、そのおかげです。でも、いずれは、僕の名前がなくても『イナズマ』を続けられるようになってほしい。最初のきっかけはつくったけれど、僕自身が抱え込むことに意味はないから……。誰が始めたとか、そんな事情を知る人が誰もいなくなるまで、長く続くといいですね」
ミュージシャンになることを夢見てバンド活動をしていた少年の頃、滋賀でコンサートを開くアーティストはほとんどいなかった。
音楽好きの滋賀の若者たちに、一流ミュージシャンのライブを聴かせたい。また、がんばっている若手アーティストたちに、大勢の人に聴いてもらえるチャンスを提供したい。
「イナズマ」には、西川さんのそんな想いも込められているのだ。
会場は、琵琶湖畔の草津市烏丸半島。美しい自然と、客席からもステージからも琵琶湖が見渡せる開放的なロケーションが自慢である。湖に夕日が沈む時間帯は、フェスのハイライト。やがて、夜の帳が下りると、湖上に月が凛と輝く……。
琵琶湖の環境保全を訴え、経済効果も
琵琶湖を眺めながら、西川さんがつぶやく。
「東京ではこんな空、見られないでしょう? 琵琶湖があるおかげで、視界をさえぎるものが何もなくて、空がほんとうに広いんです。この景色を見ることが、琵琶湖や環境問題について考えてもらうきっかけになればいいなと思っています」
最寄のJR草津駅から徒歩とバスで約30分。お世辞にも交通アクセスが良いとは言えないこの場所に、昨年は3日間で約15万人が集まった。しかも、その7割が県外からで、10年間の経済効果(宿泊費、土産代、飲食費の概算)は、累計27億円以上。県外からの来場者が、帰りに彦根城や近江八幡に立ち寄るといった波及効果も合わせれば、その額はさらに膨らむ。
今や「西日本最大級の野外フェス」に育った「イナズマ」。その事実に、滋賀県民がいちばん驚いているのではないか、と関係者は話す。「イナズマ」の成功は、それくらい奇跡的なことなのだ。