前回、会計監査の厳格化で経理担当者の負担が増していると述べたが、もう1つ、企業負担を重くしているものがある。それは内部統制だ。

内部統制とは、不祥事や粉飾決算などを防ぐことを目的に、業務の有効性や効率性、財務報告の信頼性を高めたり、資産の保全などの目的を果たすためのプロセスをマニュアル化することである。簡単にいえば、個人の裁量に任せるのではなく、誰でも同じように業務が遂行できるように整備する、ということだ。

柴山流リーダーチェック法

柴山流リーダーチェック法

余談だが、企業が内部統制の関係書類を作成するためにコンサルティングを行う業態が生まれ、一部では特需の発生により・内部統制バブル”といった様相を呈している。

しかし、私は内部統制の効果を疑問視している。内部統制は誰が行っても同じ水準の成果が得られるといったメリットを持つ半面、独創性、創意工夫を妨げる、という大きな弊害をもたらすと考えるからだ。そもそも経営者や管理職の能力が充実していれば、内部統制などいらないはずである。

真に必要なのは内部統制ではなく、「漢の三傑」ならぬ、営業、経営企画、財務の・人材3点セット”である。

まず、営業に配したいのは、韓信のような人物だ。蕭何に見出され、漢の別動隊として北東方面の計略を任された大将軍。戦術のすべてを把握し、競争戦略の基本、人の使い方を心得ており、弱腰の将兵の士気を上げて勝利を収めている。組織を整備し、システムを構築し、部下の忠誠心を育て、スキル、モチベーションを高く保つ。営業部隊にはそんな指揮官が欲しい。

経営企画を担ってほしいのは、張良のような策略家である。戦いの戦略を立てて漢を勝利に導く、劉邦軍の名参謀であり、張良があってこそ、劉邦が天下をとったともいわれている。外交の手腕を発揮して人脈を築き、外堀を埋める。5年後を想定した戦略を立て、軍をどう使うかを定める。張良の戦略があってこそ、韓信は自らの力を発揮できたのだ。

そして、財務に蕭何のような人材を擁することができれば万全だ。蕭何は劉邦軍が秦の都を占領した際、諸将が宮殿の財宝に群がるのを尻目に役所から法令文書や地図などを接収。これを大いに活用し、役立てた。後方にとどまって体制の整備にあたり、前線への物資の補給を計画的に行ったという。

財務の役割のひとつは、資金が枯渇しないよう、同時にモノ(在庫)を切らさないよう、管理を行うことである。張良が長期戦略を立てても、前線で韓信が陣頭指揮にあたっても、明日の資金(戦においては食料)がなければ戦は続かない。かといって、多すぎれば不良在庫を生みかねない。多からず、少なからずの案配で、適宜調整を図ることが重要だ。地味ながら、1番大事な役どころである。

韓信、張良、蕭何の三傑なくして劉邦の天下はなかったといわれるが、見方を変えれば、三傑を配し、使いこなしたことが劉邦の天下を生んだともいえる。いうまでもなく、学びたいのは経営者の資質である。

95%の経営者は人を変えようとするが、重要なのは「自分が変わること」である。自分が変われば自ずと人は集まる。劉邦にたとえれば、スキルに長ける人材を適所に配し、気持ちよく能力を発揮できる環境を整える。それが経営者の仕事である。

内部統制を図れば平均前後の人が過不足なく働くことができる。しかしマニュアルは5年もすれば陳腐化するだろう。それより3人の、傑物が存分に働ける環境を整備すれば、会社は成長を続けることができるのである。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成 )