2028だった平成17年度版が、平成19年度版は3057へ何と1000以上増し。20年前に比べると3倍にもなっている書物がある。監査項目などを規定した、その名も『監査小六法』だ。しかも銀行用の監査小六法は別にあるのだから、会計分野の法令の数は、今や驚きのボリュームである。

このページ増は、とりもなおさず会計監査項目の細分化、複雑化を反映している。企業が金融庁に提出する有価証券報告書も、今や、ゆうに100を超える。投資家にとっても有益な情報が含まれるが、ほとんどの人はその量と向き合う気にならないだろう。

3月決算の会社の場合、株主総会で確定する前年度決算の予測情報を、5月半ばには決算短信という形で公表している。決算短信には公認会計士や監査法人の監査証明書を添付する必要がない。短信の段階では事前に十分な監査時間をとれずに、後に提出する有価証券報告書とは整合性がとれていないケースも、まれにあったりしたものである。このように十分な作成期間がとれないにもかかわらず、決算短信が数十にのぼる例もある。

もともと決算発表は単独決算が原則で、連結決算短信は補助的に添付されていた。1990年代に入り、連結決算が原則となったことに加え、会計ルールが複雑化した。それを読む投資家も大変なら、作成するほうはもっと大変なのだ。経理担当者にとっては受難といわざるをえない。

さらに2008年4月以降に始まる事業年度については、上場企業に対し、四半期ごとに財務・業績概況の報告を求める、「四半期報告制度」が義務化された。従来は中間決算、本決算で会計監査が必要だったが、四半期報告制度ではその都度、公認会計士や監査法人のレビューが義務づけられる。

レビューとは、公認会計士や監査法人が経理担当者に財務諸表などについて質問し、不適正な記載がないかを検証するもので厳密な監査とは別物。このレビューを四半期ごとに行う必要があり、経理担当者はいかなる質問にも対応するため、入念な準備が欠かせない。

もともと会計監査の担当は従来より7年ごとで替えなければならないが、現在はさらに短い期間で担当を替えるような制度も見られる。私の経験を振り返ってみると、担当替えなどに際して、会計士の間で十分な引き継ぎができている場合と、引き継ぎが難しい場合とがあり、従来は、経理担当者が毎年同じような質問に繰り返し対応することになることもよくあった。これだけでも大変な労となる。

加えて、監査項目が増え、提出書類が増え、提出頻度が高くなる。経理担当者にとって頭を抱えたくなる状況であることは、想像に難くない。

旧埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)の専務を務めた井原隆一氏の著書に、『財務を制するものは企業を制す』という名著があるが、私は「会計士のスキルが上がれば日本のGDPは上がる」と思っている。会計士は企業の成長に寄与する影響力があると考えているからだ。

優秀な会計士を見分ける4つのポイント

優秀な会計士を見分ける4つのポイント

しかし、こなすべき業務が多すぎる今の状況では、会計士としてのスキルを磨く余裕と時間がなかなか持てず、企業の財務状況から問題点を見出し、解決策を探り、成長に結びつけるコンサルティング能力を備えるための時間を確保することは以前よりも難しいだろう。会計士からよき助言が受けられないとしたら、それもまた、経理担当者の受難といえる。

そんな状況の中でも力のある会計士を見出すヒントを右に示した。まずは自社の問題点を指摘してもらい、改善策を提示させる。指摘が的確で、企業にとって新しい発見があれば、企業にとって有益な会計士である可能性が高い。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)