育ちがよい人ほど、うまく人の心に入る

新聞記者をやってきて気づいたのは、事件記者の本質は、格好よさとかタフさとかではなく、どれだけネタを取ってくることができるかです。これは「人が言いたくないことをどれだけ聞いてこられるか」ということで、要するに「どれだけ相手の懐に入れるか」に尽きます。僕の見立てでは、育ちのよい人ほど人の心に入るのがうまい。育ちのよい人は、近づいても相手から跳ねのけられた経験があまりないから、人を信じることができるんですね。

一方、僕は生まれがものすごく貧乏で、周りにダメな大人がたくさんいた。そんな環境で育つと、接近すると嫌われる、怒られるんじゃないかと思って近寄れないんです。その心理的障壁を突破するのに、残念ながら特効薬はありません。ひたすら場数を踏むしかない。最初は慣れなくて辛いんですが、とにかく人に会いにいくのを何度も繰り返していれば、だんだん間合いが見えてきます。そうすると大抵の人は近づいても怒ったりしないのがわかってくる。僕は新聞社に12年いましたが「人間関係とはなんぞや」が見えてきたのは、働き出して5~6年経ってからです。

初対面で好感を持たれたいなら、まず自分が相手を好きになることです。加えて、自分が20代の頃に他人からやられて嫌だったことは絶対にやらないこと、年齢や肩書で差別せず、フラットな視線を持つことです。初対面の対応で「この人、苦手だな」と思うこともありますよね。やたらぶっきら棒だったりするんですが、そういうときは、実は相手が緊張している場合があります。まずはお互い緊張しないことです。それから「あなたのことが好きなんです」というオーラを出したり、「お会いしたかった」と口に出して相手に伝えれば、場の雰囲気を変えられます。たったそれだけですが、気分を悪くする人はいません。

苦手な人は、笑顔でフェードアウト

もっとも、男性社会ではヒエラルキーを重要視する人が多く、名刺の肩書を見て、自分より上か下かを推し量る人がよくいます。露骨に態度を変える人もいて、初対面でこれをやられるとかなり嫌な気持ちになります。こういう人を反面教師として、自分は“マウンティング”しないことを心がけるべきでしょう。

僕は50代ですが、相手が20代でも、「君付け」や呼び捨てではなく「さん付け」で呼びますし、自分の知らないことを知っていたら「それはすごいですね。教えてください」と言って耳を傾けます。ITなんかは若い人のほうが詳しいですからね。

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