農民一揆の手法「傘連判状」を提出

ストライキの結果、私学教員ユニオンは、団体交渉で次の成果を獲得した。

・早朝の理事長への挨拶儀式の廃止
・非正規教員の来年度の雇用延長
・非正規教員の無期雇用への転換制度の創設
・非正規教員の私学共済への加入
・正規教員の減額されていた賞与の過去二年間分の支払い、今後の賞与の全額支払い
・正規・非正規ともに、不払い残業代の過去二年分の支払い、今後の残業代の全額支払い

これらは、組合結成とストライキ決行から1カ月間で勝ち取った内容としては、非常に大きな成果だといえるだろう。

取り組みの過程で、ネット上で注目を集めたのが、教師たちが提出した「傘連判状(からかされんぱんじょう)」だ。傘連判状とは、江戸時代の農民一揆において用いられた手法であり、誰が首謀者かを分からないように円形で名前を連ねた陳情書のことだ。歴史の教科書で見たことがある人も多いだろう。

この手法を用いて、学校側の報復により特定の個人が攻撃されるのを回避しようとしたのだ。この傘連判状には、職場の3分の2以上の一般教員があつまって署名したという。正規・非正規の「垣根」を超えてこのような取り組みが進められたところにもまた、大きな意義があるといえよう。傘連判状は、正規・非正規の連帯を象徴するものでもあった。

良好な教育環境の提供は「社会全体」の課題

以上のように、私立学校でストライキが相次いだ背景には、教員の過重労働と非正規化による「教育の質」の低下、そして、それをなんとか改善したいという教師たちの想いがあった。このような想いが伝わり、教師たちの行動には、多くの同業者からの共感の声や世論による後押しが寄せられた。

子供たちに良好な教育環境を提供することは、すべての人に関係する、社会全体の課題だ。それゆえ、先生たちが問題を告発すれば、社会もそれに反応し、支援してくれるのだ。

そして、ひとたび教員のストライキが社会的に注目されるようになると、それに勇気づけられた同様の動きが次々と出てくるだろう。というのも、ここまで述べてきた、教員の労働条件の悪化に伴う「教育の質」に低下は、一部の学校ではなく、多くの学校に広がっている問題だからだ。だからこそ、個別の学校の問題に終わらせず、業界全体の改善を目指すことが求められる。