2019年1月7日、東京都千代田区の私立高校・正則学園高等学校の教員25人がストライキを行った。毎朝6時から行われていた理事長への「挨拶儀礼」を拒否したのである。なぜ教員たちはストに訴えたのか。NPO法人POSSE代表で、雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏が解説する――。
教師たちが提出した「傘連判状」(画像提供=今野晴貴)

中学校での「勧誘の業務」も課せられる教員

今年の1月7日、東京都千代田区にある正則学園高等学校という私立高校の教師たちが、個人で加入できる労働組合「私学教員ユニオン」に加入し、ストライキを行った。また、1月11日には、東京都文京区にある私立高校、京華商業高等学校の非正規教員2人が同ユニオンに加盟し、1月18日にストライキを行っている。

昨年度末にかけて、私立学校の教師たちが相次いで労働争議を起こしていたのだ。このことはメディアでも大きく取り上げられたが、問題の本質に触れる報道は少なかった。なぜ今、私立学校で問題が起きているのだろうか。本記事では、私立学校の教員のストライキが相次いだ背景を探っていきたい。

ストライキが相次いだ第一の背景には、人員削減の結果、私立学校の正規教員たちに多様な業務が課されることによって生じた過重労働の問題がある。例えば、私立学校では、多くの生徒を獲得するために他校との差異化が図られ、中学校などでの勧誘の業務が教師に課されるようになっている。

また、進学実績を上げるために補習の実施が求められることも多い。その結果、一人の教員が担当する授業が増えているにもかかわらず、教員の増員はされない。むしろ、人員が削減されるなかで新たな業務が課されている場合が多いのだ。

私立学校が抱える「教員の非正規雇用問題」

第二の背景に、私立学校に広がる教員の非正規雇用問題がある。冒頭で触れた京華商業高校のストライキは、年度いっぱいでの非正規教員の雇止めに反対して行われた。また、私学教員ユニオンは3月8日、非正規教員への不当な雇い止めを問題に、安田学園中学校・高等学校に団体交渉の申し入れを行っている。

「教育」という極めて重要な社会の基盤が、低賃金・細切れ雇用の非正規教員により支えられている……。違和感を抱く方は少なくないはずだ。

このような正規教員の過重労働と非正規教員の低賃金・不安定雇用の問題の両方が原因となってストライキが起きたのが、冒頭に述べた正則学園高校だ。