「王将調理道場」で料理のコツを教える
ほかにも改革はいくつかある。
16年には女性を主なターゲットとした新しい形の店舗「GYOZA OHSHO」も出した。女性デザイナーに店舗の設計をしてもらい、女性客が入りやすい雰囲気になっている。メニューもこれまでの王将とは違い、ヘルシーなそれがラインナップに入っている。なお、19年3月には東京の有楽町にもオープンした。
また、本社の隣に「王将調理道場」を作った。そこに全国から店長を集め、調理技術を磨き、料理のコツを教えることで、料理の品質向上を図っている。基本を大切にすることもまた改革のひとつだ。
こうした話を聞いて、わたしは地元の王将の店にあらためて足を運んだ。そして、餃子を頼む。久しぶりに行ったわけではない。前社長の時代から食べに行っていた店だ。出てきた餃子を食べても、まったく以前の味と同じ。そして、あらためて店内の従業員を見たら、確かに仕事はシンプルになっていた。
以前は餃子を巻きながら指示を出していた店長も、調理をするときは調理に集中し、部下に指示を出すときはふたりで話し合いをしていた。思うに、渡邊の行ったもっとも大きな決断は、やはり店で餃子を巻くのをやめたことだ。そして、社内の誰もがそう思っていたにもかかわらず誰もが口火を切るのを躊躇していたことなのだろう。習慣を変えることは簡単ではない。
休日は3000人前の餃子が出る「空港線豊中店」
さて、王将チェーンのなかで断トツの集客を誇るのが伊丹空港に近い空港線豊中店だ。同店舗は237席で24時間営業、休日ともなると2500人の客がやってきて、3000人前の餃子が出る。
店長の尾﨑雄太は「わたしたち現場としては餃子を巻く時間がなくなったのは、すごくありがたかった。以前は営業中でも常に餃子を巻かないといけなかったから、部下の話もちゃんと聞くことができなかったし……。餃子を巻くことに追われてしまうところがありました。今では心に余裕をもって調理に集中できますし、接客もできます。よりいいものを出そうという気持ちで調理をできるのはありがたいことなんです」と言う。
また、国産食材に変えてから、「お客さまにママたちが増えました」とも言う。
では、彼ら現場の人間が大切にしている言葉はどういったものなのか。