「モリカケ」問題は、強すぎる官邸への反発

【牧原】ええ。当時は私もその想定は正しいと考えていました。しかし、「作動学」という視点から見ると、その想定がそもそも非常に危ういものであったんですね。安倍政権では首相と首相周辺の人物による不祥事として、その軋みが表れたと言えるでしょう。

【西田】それが森友・加計問題だった、と。

東京大学 先端科学技術研究センター 教授・牧原出氏

【牧原】はい。この「モリカケ」問題で明らかになったのは、書類を抜く、部分的に書き替える、といった公文書の改ざんがかなり日常的に行われていたのではないか、という疑念でした。公文書管理制度が根付いていたはずなのに、これはおかしいじゃないか、と。彼らは首相の答弁に合うように文書を直してしまっても、問題にはならないと思っていたわけです。

もう一つは、検察の動きに関連してその資料が出てきたことです。これには官僚内部のリークがあった。私はこの一連の流れの中に、政権のリーダーシップが強化され過ぎたことが生み出した歪みを感じました。各省に対するコントロールが強まったことへの反発が、官僚たちのリークという形で表に出てきたといえるでしょう。

「政治主導」に対する官僚の反発は日本以外でもある

【西田】安倍内閣と民主党の共通点で言えば、土台部分も似ているな、という気が常々していました。例えば、選挙における公募制の導入などは、最初に取り入れたのは小泉内閣のときですが、民主党も積極的に活用しました。たとえばいまの安倍政権の文部科学大臣である柴山昌彦氏などは、いわゆる公募活用の第一事例でした。言い換えると公募候補が大臣にまで上り詰めてきた時代になってきた。

それからもう一つ、ネットの活用についても、インターネット選挙の解禁を2000年代前半から主張してきたのは民主党の方でした。2000年代前半の民主党は、インターネットを武器に政権交代にたどり着きたいと考えていた節があります。それに対して自民党は後手にまわり、主流派は反対していました。しかし2012年に第2次安倍内閣が発足して、真っ先に手を付けた改革のひとつがネット選挙運動の解禁でした。

【牧原】そうした経緯を振り返ると、安部政権と民主党政権的なものには重なる部分が確かに多いです。そのなかで、同じく共通しているのが、「政治主導」下での官僚の反発を受けてきたことです。結果として、政と官の関係が壊れてしまっていくことで、「改革」が思うように進められていない。でも、実はそうした形での「反発」というのは、日本以外でもめずらしくはありません。

【西田】牧原先生はイギリスに留学なさっていましたが、欧米でも政権交代時などに同じようなことが起こるようですね。