多感な高校時代をともに過ごした同窓ネットワークは、社会人になってから強い威力を発揮することがある。その結束力は社会の動きの背景に、高校人脈の存在をうかがわせるものでもある。

政界と官界を結ぶ開成の「永霞会」

大学以上の強い仲間の結びつきで伏流水のようにつながっているのが出身高校の同窓人脈だ。なかでも東京大学合格者数で37年連続トップの開成高校はOB同士の結束が固いことで知られる。職域別、地域別に多種多様な「開成会」が置かれており、その社会的影響力は非常に大きいとされる。

開成中学校・高等学校(東京・荒川区)

2017年9月に発足した開成出身の国会議員と中央官庁の官僚が集う「永霞(えいか)会」は話題を呼んだ。会員は国会議員が9人、霞が関の官僚は約550人。初代会長には岸田文雄自民党政調会長が就いた。

「総裁選出馬が取り沙汰されてた頃で、“ポスト安倍”を目指す岸田氏を囲む強力な『応援団』との見方が強かった」(全国紙政治部デスク)

周囲から政治的な思惑絡みで見られることに、事務局を務める元建設官僚の井上信治自民党副幹事長は「開成が大好きなんです」と前置きし、こう話す。

「国会議員の開成OBの集まりは前からあり、各省庁にも開成会があるので、開成全体で集まる機会を持ちたいと思っていた。開成会では開成時代の話が多く、運動会の話などで盛り上がります。政治家と官僚だから仕事の話も時にはしますが、周りから『岸田さんを総理にするため』と言われて困惑しています。公務員を集めても総裁選の投票権はありません」

開成は一言で言えばバンカラだ。開成卒業生で教育評論家・大学講師の伊藤悟氏は「毎年の運動会のために、半年がかりの練習を続けます。クラスを縦割りにして中1からの6学年が高3の指導を受けるため、上下の結束は異様なまでに強まる。運動会終了後に、中1と高3が号泣しながら健闘をたたえ合い、その関係は卒業後も続く」と指摘する。この上下関係の強固なところが社会に出てからの強い紐帯を生み出しているのだろう。金融界にはマネックスグループCEOの松本大氏が立ち上げた「金融開成会」、ベンチャー企業経営者が集まる「ベンチャー開成会」「ニューヨーク開成会」「外科学会開成会」など各科の医師からなる開成会まである。