伝統と地域密着性で「人脈力」を深める

灘には校則や制服がないことでわかるように校風は自由。創立時に顧問として設立者一族の嘉納治五郎が参画したことで、柔道の精神として唱えた『精力善用』『自他共栄』が校是だ。ただ、灘校生風の解釈は少し異なり、「『精力善用』は要領よく勉強して東大に受かる。『自他共栄』は、みんなで協力してウィンウィンの関係になろうという精神。徹底した合理的精神が灘校精神の中枢にある」と本郷赤門前クリニックの吉田たかよし院長は話す。

横のつながりが強いのは「自他共栄」ばかりではなく、「中学1年から高校卒業まで、複数の教師が繰り上がってずっと指導してくれます。“担任団”という特定の恩師とともに6年も過ごすこともあって、一体感はより強くなる」(吉田院長)。

有力進学校は東大をはじめ有名大学へ進み、社会に影響を与える官界、政界、大企業へ身を置き、横のつながりを強固にしていく。その点、地方の有力公立高校はどうか。

「東大内の有力高校閥は、国公立医学部や浪人回避志向が強いため、一部例外を除けば、かつてほど見受けられません。ただ、地方の名門県立高校は伝統と地域との密着性を盾に、少数派ながら東大内でも『人脈力』を深め、地元政治経済に依然として影響を与えています」(鈴木氏)

(撮影=中島みなみ)
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