東京都世田谷区の名門女子校「鴎友学園」では、「3日に1度」の頻度で席替えを行っている。なにが狙いなのか。44年間、女子教育に献身してきた吉野明名誉校長は「席替えを繰り返すことで、小さな集団でまとまらず、クラス全体が自然な形でまとまる。これは女子の集団の作り方にあっていると思う」と説く――。

※本稿は、吉野明『女の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)のCHAPTER2「知っておきたい女の子の特性」の一部を再編集したものです。

なぜ3日に1度の席替えが、10代の女子にとって「安心できる環境」を生み出すのか――。※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep-bg)

生徒の「自己肯定感」をどう育てるか

「自分の自己肯定感が低いので、せめて娘は高い自己肯定感を持った子に育てたい」
最近、そのような話を耳にすることが多くなりました。自己肯定感とは、自分の存在を肯定し、大切にしようとする気持ちのことです。自己肯定感が仕事のパフォーマンスや人間関係に影響を及ぼすという理由で、その低さを気にする大人も多くなりました。

そしてそれ以上に、自己肯定感は現代の子育てにとって、最大のキーワードでもあります。子どもの自己肯定感を高く維持することができれば、子育ての最重要ポイントの一つは終わったと考えてもいいほど、将来にわたって大きな影響を与えると考えられているからです。冒頭のように思う親御さんが増えるのも無理はありません。

私は鴎友学園で教師として44年間勤める中で、生徒たちの自己肯定感を高めることがどんなに大切なことかを、とくにここ数年、痛切に感じてきました。思春期に親がどのように接するかで、お子さんの自己肯定感は大きく変化します。思春期がどのようなものかを知り、接し方をほんの少し変えることで、お子さんは確実に変わっていくのです。

日本の子どもの自己肯定感が総じて低いことは、公式の調査データからも明らかです。内閣府『平成26年版子ども・若者白書』では、「自分自身に満足している」と答えた日本の若者の割合は45.8%で、アメリカの若者の86%のおよそ半分という値に止まっています。また、年齢別に見ても、社会に出る20~24歳の値が37.4%と、著しく低くなっています。思春期の間に低下し続けた自己肯定感は、ちょうど就職する頃に最低となってしまうのです。

今の子どもたちは、世界の人々と当たり前のように協力して働いていかなければならない時代を生きていきます。学問にしても仕事にしても、日本の中だけで完結することのほうが少なくなっていくでしょう。そのような時代に、自己肯定感の高い国の人々と同等以上にやっていくためには、自分のことを信じて、つまり自己肯定感を持って物怖じせずにチャンレンジしていく力が必要になります。私たち大人は、家庭であれ、学校であれ、そういった力をつける手助けをしていかなければなりません。