東京よりも「地方」の私立中高のほうが激変している理由
昨年末、わたしはプレジデントオンラインに「親世代とは大違い"首都圏名門私立"の凋落」という記事を寄せた。この30年の「学校勢力図」の激変を、模擬試験の「偏差値推移データ」に基づいて説明した。
「学校勢力図」の激変は、首都圏だけの現象ではない。むしろ地方の激変のほうが激しい。日本では都心部への人口集中が進んでいる。東京都が2018年3月に公表した「東京都男女年齢別人口予測」によると、東京23区部の0歳~14の人口は、この10年間で約7%増加する見込みとなっている。逆に言えば、人口流出している地域も多いということで、とりわけ地方の私立中高には少子化の波が直撃しているのである。
だからこそ、地方の学校は姿・形を変化させることで、優秀な生徒たちの確保にしのぎを削っている。こう考えると、東京よりも地方のほうが「生々流転」しているといえるだろう。特に注意が必要なのが、30~40代の「親世代」だ。自身が受験した当時の感覚で、わが子の受験校を考えてはいけない。
では、いま、どんな学校が地方で人気を博しているのか。わたしの著した新刊『旧名門校 VS 新名門校 今、本当に行くべき学校と受験の新常識がわかる!』(SB新書)の内容をもとに、地方校の実態を紹介したい。
千葉県立御三家を圧倒「渋幕」はもはや円熟の域に
千葉県はもともと公立校優位の地域だ。成績優秀な生徒は地元の公立中学から「千葉県立御三家」とされる「県立千葉高校」「県立東葛飾高校」「県立船橋高校」へ進学する。しかし1983年、千葉県千葉市に渋谷教育学園幕張高校、86年に同付属中学校が開校すると受験動向に変化が出始める。開校当初は「千葉県立御三家」の受け皿的な存在にすぎなかったが、同校の大学合格実績が伸長すると状況ががらりと変わっていくのだ。
開校して18年経過した2000年。同年度の大学入試では同校卒業生355人のうち東京大学に13人、国公立大学には合計112人の合格者を輩出。さらに昨年2018年度は、卒業生372人のうち東京大学に48人、国公立大学には合計199人、早慶には282人の合格者を出した。
今や「渋幕」の名は全国にとどろきわたっている。進学実績は「千葉県立御三家」を圧倒するだけでなく、「開成ではなく渋幕」「桜蔭ではなく渋幕」を選択する中学受験生さえ見られるようになった。在校生の住まいも千葉県のみならず、東京都、埼玉県、神奈川県、茨城県と広範囲に渡っている。