自主的に勉強のできる子どもはどこが違うのか。ある大学の研究によると、親子コミュニケーションが良好なほど、子供の精神状態が安定し、勉強にも前向きになるという。教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏は「私はムギューッとハグすることを勧めています。ただし親都合ではなく、子どもが求めるタイミングが重要です」という。正しいハグのやり方とは――。
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「待つ、褒める、肯定する」が子供の学力を高める

筆者の元には、日々、子育ての相談が数多く押し寄せるが、母親を中心とする相談者の話をよくよく聞いてみると、結局のところ「頭のいい子に育てたい」という願望が見え隠れする。

これは親なればこその願いである。「這えば立て、立てば歩めの親心」は親になった者だけが味わえる特別な感情かもしれない。昔、よく聞いた「末は博士か大臣か」ではないが、わが子にはできるならば社会から強く求められる人材に成長してもらい、そして幸せに暮らしてほしいと親が願うのは無理からぬことだろう。

その際、必須なのは一定程度以上の学力や人間力だが、親が子どもにどう接し、どう育てたら、子どもの学力や人生に対して、より良い効果を与えることができるだろうか。

長年の子育て相談の経験を踏まえ、確実に言えるのは「待つ、褒める、肯定する」の3点だ。実は、後述するようにこれらの実践方法のひとつとして「ハグ」も入ってくるのだ。順番に効用を説明していこう。

1:「待つ」

とかく、人は人を待てない。例えば、家事分担で皿洗いの夫が夜遅くになっても一向にやろうとしないことに妻が怒り、夫は「今やろうとしていた」と態度を硬化させる。感情のこじれから共働きの家事の分担がうまくいかないという悩みはありがちだ。夫と妻のタイミングが合わず、妻が「待てなかった」ということになろう。

親子間でもこういうことは毎日のように起こる。そして大抵は親が「待てない」ことに端を発し、ケンカなどに発展する。子どもには子どもなりに飛ぶタイミングがある。子育ては、子どもの先回りばかりをせずに、上手に声掛け誘導をしながら、どこまで待つのかの長い目で見た「線引き」が必要なものなのだ。

「親」は漢字の成り立ちで見ても「木の上に立って見る」と書かれるように、俯瞰して状況を見ることを求められている。これは難易度が高い話だが、要するに「人には人のタイミング」があるということなのだ。

2:「褒める」

人間は誰しも「承認欲求」を持つ。何歳になろうとも、人は人から褒められたい。誰でも、褒められるとうれしいし、やる気が出る。子どもは、より純粋なので「褒め言葉」はダイレクトに「承認欲求」を満たすことに結びつく。

子どもを褒めることが苦手だという親御さんは多い。そういう場合は簡単なことから始めてはいかがだろうか。例えば、食事の際、「醤油を取って」とお願いし、それを取ってもらえたら、間髪入れずに「ありがとう(あなたが取ってくれたおかげで助かった)」と言う。たったそれだけでも、自分の存在意義を子どもは感じるはずだ。

3:「そのままを肯定する」

このハードルは高い。親は子に「もっと、もっと!」を望みやすく、わが子に対しては特に「足るを知る」ことは難しい。しかし「子育てがうまくいかないな」と悩みだした時が、逆にチャンスになると筆者は考えている。

とりあえず、「子どもの先行きの不安」はいったん置いておく。これは「あれもそれもこれもダメダメだけど、まっ、いいか」と親自身の「べき・ねば」思想を緩くするということだ。

お笑いタレントの明石家さんまさんが繰り出すフレーズの中に「生きてるだけで丸儲け」があるが、これに学び、子育てからもネガティブな気持ちをできるだけ排除する。これにより徐々にわが子の「自己肯定感」を引き上げるコツとなる。