奈良県の歴史の浅い学校がのし上がったワケ

10年以上前のことだが、わたしは西大和学園の校長(当時)に取材した。その頃、同校はポスターで「京都大学合格者数の伸長」を全面的に謳っていた。

奈良・東大寺(写真=iStock.com/vanbeets)

「不本意ながら予備校さながらのポスターになっていますが、まずは西大和学園に目を向けてもらうきっかけになってほしい。まずは入学してもらい、そこからわれわれはしっかりとした教育を行って、世界のリーダーを育成していきたいという思いが強くある」

当時の校長はそのように語っていたが、その思いはいま確かな形となっている。

現在、同校は帰国子女などの積極的な受け入れをはじめ、文部科学省の定めるスーパーサイエンスハイスクール、スーパーグローバルハイスクールとして指定されていて、その教育プログラムは多岐にわたっている。

授業は国際性の育成と問題解決能力の育成に重きを置いている。また、中学3年の時には卒業論文を書かせることで表現力も鍛えようとしている。一流大学の合格実績だけを追う学校ではなくなっているのだ。

札幌の中学受験過熱「北嶺」と「立命館慶祥」の熾烈なバトル

札幌市には、札幌南高校など優秀な公立高校が多く、私立より公立志向が強い地域である。しかし、近年このエリアの中学受験は「過熱化」している。そのきっかけは、北嶺(札幌市)と立命館慶祥(江別市)というニューウエーブ校の出現である。

男子校の北嶺は、以前はそれほど注目される学校ではなかった。しかしながら、1学年約120人という少人数制指導のもと、大学受験指導で着実に成果を上げ、難関校の一角に躍り出た。昨春の大学合格実績は東京大学に13人、北海道大学に25人、早慶に17人などであるが、同校が重点を置いているのは医学部への進学だ。北嶺のホームページには「各期の最終進学先一覧」があるのだが、そこを見ると「医学部医学科」という文字がずらりと並んでいる。実際、北嶺を志すのは医者の子供が多い。

また、一学年40~50人程度は同校が設けた寮で寝食を共にしているのも特徴のひとつだ。全学年(中1~高3)で300人近くがこの寮に入っているが、道外出身者が多く東京・神奈川出身者だけでも60人弱もいる。寮で生徒たちを学ばせる上で、学校側はさまざまな仕掛けを用意している。

たとえば北嶺卒業生で北海道大学医学部や札幌医科大学に進学した学生たちがアルバイトで寮に来て生徒指導をおこなう。予備校OBがチューターとして受験生のケアをすることはあるが、寮にまで行って指導するのは珍しいだろう。

「北嶺」という校名が示すように「目指すなら高い嶺を」と学校側は考えている。いまは東京大学合格20人突破を身近な目標として掲げている。

この北嶺を追いかける存在として脚光を浴びているのが、共学校の立命館慶祥である。もともと札幌経済高校という校名だったが、1996年に立命館と法人合併した。名のごとく立命館大学の付属校だが、他の大学進学にも力を入れ始めている。SPコースという「特進クラス」を設置して大学受験対策に特化したカリキュラムを構築、徹底した指導をおこなうことで徐々に結果を出している。昨春の大学合格実績は東京大学に5人、京都大学4人、早慶上智に27人となっている。