異業種交流会には意味はない。これは本当だろうか。法政大学の田中研之輔教授は「社会的なつながりが弱い人の方が、自分に有益な情報をもたらしてくれるという説がある。人的ネットワークを広げる機会を軽視していると、仕事のストレスを一人で抱えたり、転職の選択肢を減らしたりすることにもなりかねない」と指摘する――。

お金は「交換手段」でしかない

思い描く自分らしい人生を過ごしていくのに、お金は欠かせません。しかし、私たちは、お金より大切なものがあることを日々の暮らしを通じて感じています。お金を稼ぐことそれ自体を人生の目的にすえると、ろくなことにはなりません。お金は、手に入れたい暮らしに必要な交換手段でしかないのです。

では、何を大切にしたら、人生は豊かになるのでしょう。

リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』のなかで、「お金より大切なものは、無形資産」であると提唱しています。「無形資産」とは、家族、友人、高度なスキルと知識、肉体的・精神的な「健康」などです。

リンダらの指摘で納得するのが、「無形資産は、それ自体として価値があることに加えて、お金などの有形資産の形成を手助けし、100年ライフを送る上で鍵となる要素だ」と、指摘している点です。噛み砕いて述べるなら、無形資産を増やしていくことは、それ自体が幸せなことであると同時に、有形資産の形成にもつながっているのだと教えてくれているのです。

「生産性資産」「活力資産」「変身資産」

それでは、無形資産について詳しくみていくことにします。無形資産は、(1)生産性資産、(2)活力資産、(3)変身資産の三つに分類されます。

リンダ・グラットン アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』P.127から筆者要約作成(画像=田中研之輔)

(1)生産性資産は、仕事の生産性を高め、所得とキャリアの見通しを向上させるのに役立つとされます。語学、プログラミング、ライティング、編集、統計処理等、さまざまなスキルや知識が生産性資産になります。

生産性資産を増やしていく上で見逃してはいけないポイントが二つあります。一つは、「いつ」身に付けるのか、もう一つは「どの種類」の生産性資産を身につけていくのかということです。

生産性資産を増やすことは、100年ライフを通じて「学び続ける」ということでもあります。大学を卒業して、学ぶことを終えてしまえば、その人の生産性資産は増えないわけです。例えば、語学やプログラミング言語は、お金を払ったらすぐに習得できるわけではありません。投資コストだけでなく、相当数の時間をかけなければ、資産化することはできないのです。

そのため、投資コストと労力を考えて、あなた自身のライフステージの、どのタイミングで集中的に取り組むかを判断することが必要になります。無理のない範囲で、集中的に継続していくことが、生産性資産を蓄えるポイントです。