「異業種交流会」を甘く見た人が失うもの
逆にいえば、こうした機会を軽視していると、活力資産も変身資産も失って、「自己再生のコミュニティ」が次第に弱くなっていきます。仕事のストレスを一人で抱えてしまったり、転職を迫られたときに選択肢が少なくなってしまったりするのです。
この変身資産の蓄積は、社会的ネットワーク論者として著名なマーク・グラノベッター教授が提唱する「弱い紐帯の強み(“The Strength of Weak Ties”)」ともリンクしてきます。
弱い紐帯の強みとは、家族や親友、職場の仲間といった「社会的に強いつながりを持つ人々」よりも、友達の友達やちょっとした知り合いなど「社会的なつながりが弱い人々」の方が、新しく価値の高い情報をもたらしてくれる可能性が高いことを示した説です。この弱い紐帯を機能させるために、日頃から変身資産を蓄積していくことを心がけておく必要があります。
生産性資産と活力資産と同じように、変身資産も戦略的に管理し、形成していくのです。そうすれば、変身資産は、新しいことに挑戦し、行動していく背中を押してくれるものになります。
戦略的に「資産」をマネジメントする
さて、これらの理解を踏まえて、「あなた自身の資産管理」をしてみましょう。(1)生産性資産、(2)活力資産、(3)変身資産、そして(4)有形資産の「増減」を、あなたのライフチャートの中に落とし込んでいくのです。
無形資産と有形資産を合わせた複合的な資産管理は、現在の資産分配状況を可視化させるだけではありません。最大のメリットは、今後のライフプランをこの資産管理の戦略的なマネジメントから構想できる点にあります。
労働の対価としての有形資産は増えてはいるものの、無形資産が増えていかない日々を過ごしているのであれば、人生100年時代を生き抜く上で、不安が募ります。逆に、現状の生活をしていく上で最小限必要な有形資産しか形成できていない場合であっても、無形資産を豊かに増やしている暮らしであれば、その日々は、自己充実度も幸福度も高い毎日なのです。いずれ有形資産の形成にもつながることにも期待がもてます。
さあ、あなたはどのような資産を形成していきますか?
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
1976年生まれ。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめ、2008年に帰国。専攻は社会学、ライフキャリア論。著書に『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(ちくまプリマー新書)、『ルポ 不法移民――アメリカ国境を越えた男たち』(岩波新書)など18冊。社外顧問・社外取締役を歴任。新書に『教授だから知っている大学入試のトリセツ』『辞める研修 辞めない研修―新人育成の組織エスノグラフィー』