年間に死亡者を5500人以上出しているのが「膀胱ガン」。早期発見に結びつく2大症状である「血尿」と「膀胱炎症状(頻尿・排尿痛)」を見逃さないことである。

男性の場合、痛みがあっても膀胱炎は一般的ではないので、すぐに泌尿器科を受診するだろう。

ところが、女性は膀胱炎と思って放っておくケースがある。若ければ膀胱炎でほぼ間違いないだろうが、高齢者では膀胱ガンの疑いが強くなる。痛みのあるケースのほうがガンとしては悪性で、痛みのないほうが悪性度は低い。

膀胱ガンには「上皮内ガン」「乳頭状ガン」「結節状ガン」「潰瘍タイプ」の4つがある。

上皮内ガンは苔のような形状をした早期ガンだが、性質(タチ)が悪い。同じく早期の乳頭状ガンはカリフラワータイプで粘膜と細い茎で結びついている。性質はおとなしいガンである。結節状ガンは膀胱内に飛び出すタイプ。浸潤性のガンで転移が早い。潰瘍タイプも結節状ガンと同じく転移が早い。

この中で乳頭状ガンは、早期に発見された場合には、内視鏡を使った「経尿道的膀胱腫瘍切除術」による生検治療が可能である。

一方、“性質が悪い”と紹介した上皮内ガンは、粘膜のどこにあるかがわかりにくいため、取り残しが多い。つまり、再発、進行のリスクが高いので「膀胱内注入療法」を行っている。

これは膀胱の“尿をためる”特性を利用した治療法で、注入するのはBCGや抗ガン剤(マイトマイシンCや塩酸ドキソルビシン)。注入を行う日は朝から水分の摂取を抑えて臨む。これは膀胱内に高濃度に薬をとどめておくためで、時間は約2時間。BCGの場合は毎週1回を6~8回行う。

BCGは抗ガン剤よりも2~3倍も効果が高いにもかかわらず、患者も医師も第1選択をためらう。それは、ときに重い副作用があるからだが、優秀で経験豊富な医師のもとで行えば、危険なことはない。

また、内視鏡による切除後、再発が心配されるケースにも、BCG膀胱内注入療法は行われている。

これがII期、III期となると膀胱をすべて切除するのが標準治療となる。男性では前立腺、女性では子宮も切除される。と同時に、排尿の道を新しくつくる方法がとられる。これには何種類もの方法があるが、多く行われているのは「回腸導管造設術」「導尿型代用膀胱造設術」「自排尿型代用膀胱造設術」の3方法。

再発リスク、QOL(生活の質)を充分に考え、医師と話し合って最善策を決定すべきである。

 

食生活のワンポイント

膀胱ガンはある種の食材に強く影響される。また、嗜好品にも――。

膀胱という臓器の特性を充分に考えて食生活を考えるべきで、以下の3ポイントはしっかり実行してほしい。

(1)ぜんまい、わらびは十分アク抜きを!
「ぜんまい」や「わらび」にはプタキロサイドという発ガン物質が入っている。正しくアク抜きがされていれば問題はない。が、自宅で作るときに、十分アク抜きがされずに食卓に出る場合もある。食べるときはこの点を十分注意してもらいたい。

(2)タバコはやめる!
タバコの煙の中には発ガン物質のナフチルアミンが微量ながら含まれている。それが尿と一緒に排出されるので膀胱と関係する。愛煙家だけが膀胱ガンのリスクがアップするのであれば自業自得なのだが、嫌煙家までリスクがアップするのは問題だ。

(3)ミネラルウオーターは1日1.5リットルを!
 水分を充分摂取すると、おしっこの回数が増える。もし膀胱に発ガン物質があったとしても、滞留時間が短くてすむ。そして、水は発ガン物質の面からもミネラルウオーターが安全であろう。