胆のうや胆管に石ができる「胆石症」。日本人の約10人に1人が胆石を持っている。
胆石があっても無症状であれば、別段体に悪さをするわけではないので、無症状のまま生涯を全うできる。そういう人が70~80%といわれている。残りの20~30%が症状を起こして治療を必要とする。
多くは天ぷらやステーキなど脂っこいものを食べた後に痛みが生じる。脂っこいものを食べた後は、胆汁を出すために胆のうが収縮する。そのときに胆石が動いて胆のう粘膜を刺激するためである。
また、胆石が胆管にこぼれて胆管を塞いでしまうと、やはり痛みが生じる。この場合は“疝痛(せんつう)”といわれ、脂汗がにじむ激痛である。急性胆のう炎という合併症を起こしてしまうので、緊急治療が必要となる。
さらに、胆管と胆のう管が一緒になって総胆管として十二指腸に入るが、その総胆管に石がこぼれたときには、症状の有無にかかわらず胆石を取り除く。それは、細菌感染症の敗血症を起こしやすいからである。
この胆石症、石が大きくなったり、発作を繰り返すようであれば治療が勧められる。
治療には「溶解療法」「破砕療法(体外衝撃波破砕術)」「腹腔鏡下胆のう摘出術」「内視鏡的胆石除去術」がある。が、今日では腹腔鏡下胆のう摘出術が中心となっている。
溶解療法は石を溶かす薬を使う療法だが、あまり効果がない。無症状の「サイレントストーン」であればそれでもいいが、症状がでているときに薬で無駄な時間を費やすのは、けっして患者のためにはならない。
もうひとつの体外衝撃波破砕術は、外部から胆石に衝撃波をあてて石を細かく砕き、排出する治療法である。だが、合併症が多発し、今はほとんど行われていない。
治療の中心の腹腔鏡下胆のう摘出術は、日本では1990年に開始された。腹部3~4カ所に1センチと0.5センチの孔(あな)を開け、そこから腹腔鏡や手術器具を入れ、モニターを見ながら胆のうを摘出する手術。全身麻酔下で行われ、手術時間は約1時間で終了する。
腹部に残るのは小さなキズだけで、患者の体にやさしい手術とあって、施設によっては日帰り手術として行っているところも多くなっている。
もちろん、日帰りで行える手術といっても無理は禁物。患者の40%は1泊、もしくは2泊の入院になっているのが現状である。
食生活のワンポイント
体の中にできる胆石。その石は昭和40年代くらいまでは「ビリルビン結石」が多かった。胆汁の色素成分のビリルビンが固まったものだった。
それが今は、「コレステロール結石」が多くなっている。胆汁の主成分のコレステロールが結晶化した石である。
このコレステロール結石ができないようにするためには、以下の3点を守ってもらいたい。
(1)脂肪分の多い洋食ではなく、和食中心の食事に!
和食に比べてどうしても脂肪の多い洋食はコレステロールが増えてしまう。
(2)三食規則正しい食生活を!
朝食を抜くと、15時間くらい胆汁が絞り出されない状態が続く。すると胆のうの胆汁が濃縮されてしまい、石ができやすくなる。
(3)野菜を十分に摂ろう!
健康のためには、野菜は1日に350グラムは摂るようにいわれている。
その野菜には食物繊維も多いので、それが余分なコレステロールを吸着して排泄してくれる。野菜以外で食物繊維が多いのは、豆類、納豆、おから、オートミール、海藻類、果物、玄米、大麦、コーンフレーク、キノコ類、山菜類など。