自分もかつては「バカ会社員」だった
私は新卒で博報堂に入社し、4年ほど在籍したのだが、その間は「バカ会社員」の側にいた。いま考えると実に失礼な話ながら、確かに、企画が実現しなかった案件においてフリーランスの人々を打ち合わせに呼び出したり、企画書をつくってもらったりしても、それに対する費用を払ったことがない。普段レギュラー仕事を頼んでいるから、そこに付随する「サービス」のごとき感覚を持っていたのだろう。だが、その業務がサービスであるかどうかを決めるのは、本来は先方の判断である。
そして2001年にフリーランスになって以後、安易に打ち合わせに呼び出されたり、なんだかよく分からないまま企画が進行したり、頓挫したりした経験を重ねながら、会社員時代の自分がどれだけ傲慢だったかを痛感していった。自分がないがしろにされて初めて、会社員によるフリーランス軽視の姿勢を理解できたのである。
ツイッター上でNHKのプロデューサーに激怒
フリーランスをないがしろにする事例として、私がNHKから受けた扱いを紹介しよう。恥ずかしいが、ここでまとめを読むこともできる。
以前、NHKが新しい帯番組を立ち上げることになり、私に「曜日コメンテーター」の打診が番組開始の3カ月前にあった。そこで先方まで打ち合わせに出向き、和気あいあいとした雰囲気のなか大勢のスタッフと話し合い、アイデアを提案しまくった。
しかし、なかなか次の連絡がない。番組開始1カ月ほど前に一度電話をして「何か事前にやっておくべきことはありませんか?」と尋ねたところ、「あぁ、特にないですよ」と言われた。そして開始1週間前、いざ新番組の詳細情報が解禁されてみると、私は曜日コメンテーターのラインアップに入っていなかったのだ。
私は驚き、担当プロデューサーに「どうなってるのですか?」と電話した。すると「あれ、連絡が来なかったら採用ではないって言ってませんでしたか~?」と寝ぼけたことを返してきた。堪忍袋の緒が切れた私は「バイトの面接やってんじゃねーよ、ボケ」と激怒し、ツイッター上で非難したのである。
最終的には当のプロデューサーから丁重な謝罪を受けたのだが、こうまでしないと無名のフリーランスは報われないのだ。くだんの連投ツイートにしても、汚い言葉のオンパレードではあるが、この時はわが身を守るべく、また会社員によるフリーランス軽視を周知させるべく、私なりに強い問題意識や危機意識を持って声を上げたつもりだ。