取引先の「信頼できる人物」をつかまえておくべし

とはいえ、ほとんどのフリーランスにこのようなマネはできないだろう。「ひどい扱いを受けたのは事実だけど、告発したら私は業界から干されてしまうかも……」なんてことを考えたら、断腸の思いでだんまりを決め込むほかはないのかもしれない。

そこでフリーランスの皆さまに伝えたいのは、「とにかく信頼できる“上流”(カネを払う側)の人間をつかまえておけ」ということである。

前述したような「発注者が許せないほど非礼な扱いをしてきた際には、ツイッターやフェイスブックで容赦なくキレて、指摘する」という行為を、私はこれまでに何度か断行してきた。実は最近も同様の指摘をしたのだが、発注してきた会社の信頼できる方々から「ウチの者が何か失礼をやらかしましたか?」という連絡をいただき、実際に会って事の子細を伝えるまでに至った。そこで「安易にフリーランスを呼びつけて、企画だけ出させる風潮はマズイことを社内で共有しておきます」というありがたいお言葉をいただいた。

「顔合わせ」のために大人数で地方出張する愚

バイトであれば、時間を提供すればお金は発生する。しかし、大御所以外のフリーランスには発生しない。このゆがんだ商慣習の改善を、安倍政権が推進する「働き方改革」にも盛り込んでいただきたいと切に願う次第である。

同じような話では「顔合わせ」なる謎の風習についても触れなければならない。昔、かなり遠い地方都市に住む著名クリエーター(いわゆる“大御所”)から、次のようなエピソードを聞いたことがある。

その人物に企画に入ってもらうにあたり、東京の広告代理店のスタッフが9名、羽田空港→伊丹空港→地方空港→長距離タクシーというルートで打ち合わせのためにやってきたのだという。当然、日帰りはできない距離だ。

そのクリエーターは経験豊富なプロフェッショナルなのだから、最初のオファーやその後のメールなどでのやり取りを通じて、企画の骨格とアウトプットに関するイメージはできていた。にも拘わらず、単に「顔合わせ」のためだけに、9人もの人員が1泊2日の時間と費用をかけてやってきたのだ!