中国の広州、深センなどの市長トップ級が7月末に来日し、トヨタやホンダなど電気自動車(EV)を中心とした新規投資を求める動きが報じられている。この「電気自動車」詣でが、なぜ起きようとしているのか。その真相に迫る。
今、自動車の流れは、100年以上続いたガソリンエンジンを使用するクルマから、電気自動車(EV)へとシフトを見せている。電気自動車の仕組みは、エンジンや変速機などの設計製造の習得の難しい部品を必要とせず、比較的簡単につくれるのが特徴だ。そのため、中国政府は、自国のメーカーを世界のトップレベルに押し上げる好機と捉え、その秘策を着々と進めているのだ。
中国の自動車事情に詳しい外国自動車メーカーの幹部は、その秘策について、「中国が、市場への参入と引き換えに、海外自動車メーカーから、電気自動車のカギとなる技術を力ずくで無理やり奪い取る行為に等しい計画」だと語る。
これは、電気自動車とハイブリッド車で中国を「世界のリーダー」に押し上げ、世界の環境車市場を制するための10カ年計画である。
複数の外国自動車メーカーの幹部は、「この計画は、中国政府による外資への差別で、外資の技術を盗み取ることを目的としたものだ」と指摘し、今回の中国の産業政策を口々に批判している。
この政策を具体的に説明しよう。それは、中国の工業部門の統括官庁であり、日本の経済産業省にあたる工業情報化部が、外国の自動車メーカーに対し、中国企業との合弁事業、技術移転を要求(強要)できるようにするというものだ。
計画の草案を読んだ外国自動車メーカーの幹部は、この計画は2020年までに総額1000億元(約12兆3000億円)を投入し、バッテリー充電ステーションやその他のインフラ分野を整備するものだという。
そして、電気自動車およびプラグイン式ハイブリッド車市場において、最大で中国の5企業を国際競争力を備えるメーカーへと成長させ、新型電池や電気モーター関連の主要パーツの供給においても中国の2~3企業を世界的サプライヤーに育てることを目標とするのだという(インフラ投資額のうち、どれだけが企業による投資分になるのか、もしくは政府の投資になるのかは不明だが)。