「消費者と直接コミュニケーションを取りながら、DMP(データマネジメントプラットフォーム)と呼ばれるシステムを導入し、常に顧客データを蓄積しています。会員登録をすればライオンの商品を購入する際に使えるクーポンが付与されるなどの特典を用意し、消費者とより強固な関係を築く。そのうえで、アクセスデータを自社で一元管理することで、市場分析や広告手法に活用しているのです」

(上)「お洗濯マイスター」など、各分野の専門家が情報を提供している。(下)会員登録をすることでクーポン配布やおすすめ記事のレコメンドを受けられる。

まずは読者の支持が得られなければ始まらないわけだが、そのための工夫は随所に見られる。「みんなのハテナ」というコーナーでは、読者から質問を募集。一方通行の発信ではなく、コミュニケーションの場を設けている。また、「お洗濯マイスター」や「リビングケアマイスター」「オーラルケアマイスター」など、各分野のノウハウに長けた自社スタッフを専門家として立てることで、記事の信頼性を担保するのもそのひとつだ。

主には主婦向けの記事づくりが目を引くが、時には男性向けに発信したり、イベントと連動させたりと、読者層の拡大にも余念がない。

こうして「Lidea」を人気メディアに育てることで、多くの消費者と接触、そこで得られたデータを漏らさずストックし、ビッグデータとして活用する。これぞ、オウンドメディアを用いたマーケティングの王道と言えるだろう。

「また、常に消費者とコミュニケーションを取ることで、人々が暮らしの中で抱えている問題や、関心が高まっている分野などを敏感に察知し、それを商品開発に生かすことができます。さらに、広告手法への反映も行われています。たとえば消費者の嗜好や流行を読み解き、店頭でのポップをより関心を引きやすいものにアレンジすることにも生かされているそうです」

大手企業が“メディア”の読者のデータを自ら直接収集する取り組みは興味深い。

こうした流れを受け、宗像氏は「テレビ局や出版社などの商業メディアと、一般企業の垣根が曖昧になりつつある」と現状を語る。人気メディアを所有する恩恵は計り知れない。