「フェイクニュースを報道するなら国民の敵だ」

アメリカのトランプ大統領がここまでひどいとは思わなかった。中間選挙から一夜明けた11月7日にホワイトハウスで行われた記者会見のことだ。

日本のテレビニュースでも繰り返し報じられていたが、トランプ氏が自分の気に入らないCNNテレビの記者を責め立て、怒りにまかせて「フェイクニュースを報道するなら国民の敵だ」と非難した。

最高権力を持つ者が、その権力を使って言論を封殺する。これが民主主義国家を代表してきたアメリカの姿なのだろうか。なんとも情けなくなる。

同時にトランプ氏のような大統領がいるアメリカを信頼して強い同盟を結んでいる日本は今後、どう対応していけばいいのだろうかと不安にもなってくる。

ただ、幸いなことに中間選挙の結果、アメリカ議会は上院下院で多数派が異なる「ねじれ」を引き起こした。これでトランプ氏の勢いも、多少は衰えるだろうと思った。

11月7日の記者会見で、トランプ大統領は、CNNの記者から「中南米からの移民集団を侵略者と思うか」と問われ、「侵略者だと考えている」と答えた。(写真=Sipa USA/時事通信フォト)

ホワイトハウスは質問したCNN記者を出入り禁止に

ところが、そう思った直後に起きたのが、あの記者会見だった。ここでテレビニュースを思い出しながら問題の記者会見を振り返ってみよう。

トランプ氏は選挙戦終盤で中米からの移民集団(移民キャラバン)を「アメリカへの侵略だ」と敵視した。そのことをCNNテレビの記者から問われ、「彼らが役者だと思うのか。彼らはハリウッドから来たのではなく、現実だ」と反論した。

さらにロシア疑惑について質問されると、トランプ氏は「でっち上げだ」と怒鳴り上げ、記者のマイクを取り上げるように指示し、「CNNはあなたを雇っていることを恥に思うべきだ」と罵った。

ホワイトハウスはCNNテレビ記者の記者証を取り消して記者会見への参加を禁止したというが、これも異常なことである。

「トランプ大統領の攻撃はあまりに行き過ぎていている」

もちろんCNNテレビも負けてはいない。声明を発表して「トランプ大統領の攻撃はあまりに行き過ぎていている。危険であるだけではなく、非国民的だ」と強く批判した。

日本でも記者会見で反論する記者を怒鳴り上げたり、恫喝したりする政治家はいることにはいるが、トランプ氏ほどではいない。

ホワイトハウスの今回の記者会見では、別の記者がトランプ氏のこの態度に抗議する場面もあったが、記者として当然の行為である。

無謀な大統領だからこそ、ホワイトハウスを担当する記者たちがひとつにまとまって強く抗議し、大統領を追及する必要がある。ライバル関係にあっても他社の記者同士が協力し合いながら権力と戦っていくのは、アメリカが生んだジャーナリズムの姿である。