「良い部下」が「良い上司」になるとは限らない

上司のパワハラ発言に悩まされる人は多いでしょう。パワハラ上司を見るたびに、「なぜこの人はえらくなれたのだろう?」と素朴な疑問が頭をよぎることがあるかもしれません。部下や他人との付き合い方が下手なのに、どうして昇進できたのか。

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ズバリ、その上司は「上司の上司」からのウケが良かったがために昇進できたのだと推測できます。

そもそも、上役に接するコミュニケーションのスキルと部下に接するスキルでは性質が異なります。平社員時代に上の意を汲み、ゴマをすり続けた結果、上司から可愛いがられて、出世できました。しかし、自分より下の後輩や新人に接する力は身につけてこなかったため、部下の気持ちを推し量れず暴走するパワハラ上司になってしまうのです。

近年になって「ハラスメント」の考え方が日本でも定着したことで、問題が表面化したわけですが、もともとこのような人々は世間にたくさんいました。酷い暴言を吐きながら「今年の新人は打たれ弱い」などとあざ笑う。そしてそんなダメ上司はいまだ数多く野放しにされています。

なぜそんな事態になってしまうのか。シンプルに言えば、自分にゴマをする居心地の良い人間ばかりを引き上げる「上司の上司」の問題であり、さらにその上の上司が……と突き詰めていけば、日本の組織が抱える「構造的な問題」だと言えます。

ここで「上司の上司」が学ぶべきは、「良い部下」が出世したら必ずしも「良い上司」になるとは限らないということです。立場が部下のときには、直属の上司のことだけを考えればいいのに対して、上司ともなれば、何人もいる部下それぞれの個性や考えを見抜く、より細やかなコミュニケーションが求められます。