部長以下の社員に固定席なし

──そうした素養の基盤は?

コミュニケーション力と、異なる立場や考え方を受容する姿勢だろう。

18年1月、三菱地所は本社を移転した。新しい本社ビル「大手町パークビルディング」のオフィスづくりでは、働く環境を大幅に見直した。

部署単位でフリーアドレス制にして、部長以下の社員には固定席がない。立って仕事ができるデスクもあれば、グループワークに向いた島型のデスクもある。1人で仕事に集中したいときには、予約制で個人用ブースも使える。

社員がそれぞれに合った働き方を選べるようにするのが狙いだが、さらに重視したのは、社内のコミュニケーションを活発にすることだ。

今はともすれば、顔を合わせなくても社内メールで用件が済んでしまう。部署間でも、仕事上の要件がないと他の部署へ行くこともあまりない。そういう人と人の垣根をまずハード面で、すなわち空間的な工夫で取り払いたいと考えた。

新しいオフィスでは、カフェテリアも含め、予約不要でちょっとした打ち合わせがすぐできる共用スペースを多く設けた。また、オフィス内に内部階段を設け、フロア間を自由に行き来でき、社員同士の偶発的な出会いが生まれやすくしている。社員同士のコミュニケーションでは、雑談も大切だ。雑談の中から、それまでにない気づきやアイデアが生まれることはよくある。

社員が自分たちで自由に自発的に、最も働きやすい環境をつくっていけるオフィス。部署や業務の垣根を越えて交流する機会を増やすことで、互いが情報を共有し、刺激を受け合うような環境づくりを目指した。