イノベーションを起こすのは、AI(技術)ではなく人間
AI人材を2020年までに1000人規模にすると発表するなど、日本のAI技術の開発、活用を先導しようと意欲に燃えるNEC。中期経営計画でも、AI技術を活かしたセーフティ事業に重点を置き、サービス型ビジネスへの転換を目指す。これからAIへの対応が本格化する中、会社をどう変え、どのような人材を育成しようとしているのか。同社の遠藤信博会長に話を聞いた。
──今後AI化が進む一方、これから生き残っていくために必要な人材の条件とは何でしょうか。
AI時代を迎える中、生き残るための条件とは、まず「価値を受け取れる力」だと考えています。価値を受け取れる力とは、自分の外にある価値をしっかりと理解して受け容れられる能力のことです。もっとわかりやすく言えば、結婚したときに、パートナーがつくる味噌汁の味を受け容れられる力があるかどうか。味噌汁はその人が生きてきた文化であり、結婚生活を円満に送るには自分とは異なる文化を受け容れられる力が必要です。最近流行のダイバーシティも同じこと。そもそも個というものを尊重する力がなければ、個を活かすこともできないのです。
そしてもう1つ必要な力が「価値を創り上げる力」です。価値を創るには、考え抜く力が必要になってきます。それは本質に近づく力でもある。事の本質に近づかないかぎり、本当に価値あるものは生み出せないのです。
──ビジネスで本質に近づくとは、どういったことなのでしょうか。
我々は通常、新しいビジネスを始める際に市場の様々なニーズを探ろうとしますが、その内側にある、本質的な欲求を見逃してはなりません。本質的な欲求に近づけば近づくほどビジネスの需要は増えていき、その欲求に最も近づいたとき爆発的に需要は伸びるのです。私はこの状態をイノベーションと呼んでいます。
勘違いしてほしくないのは、イノベーションは人間が起こしているのであり、技術が起こしているわけではないということ。だからこそ、AI時代になっても、人間の価値自体は変わらないと考えています。