これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、富士通の田中達也社長のインタビューをお届けしよう――。

「優秀な人材を自分の部署で抱え込むな」

かつて国内パソコン市場を席巻していた富士通だが、現在では理化学研究所と共同開発した世界最高峰のスパコン「京」の技術をAIに応用するなど次世代技術の開発を急ぐ。

社内では、約3万5000人の全社員を対象にテレワーク(オフィス以外での勤務)を2017年4月から導入しており、国内では最大規模となる。上司の許可があれば、何度でも利用できる。

「ITを活用して働き方改革に挑むのは日本を代表するIT企業の責務だ」と田中達也社長は言う。

IT産業の土俵が加速度的なスピードで変わりつつある中、米国のIT大手との競争も激しさを増してきている。これから必要とされる人材とは。

──世の中が目まぐるしく変化する中、どんな人材を求めますか?

富士通 社長 田中達也氏

まず富士通という会社と、その中での自分を客観的に見られることが重要です。これだけ世の中の変化が激しいと自分の中に軸を持ちながら、客観的に自分を見られる力が必要です。もう1つは変革意欲のある人。現状に甘んじず、今日より明日をよくするために何をすべきかを考えられるか。そのためにも自分を客観視できる必要があるわけです。

また、当社は技術主体の会社でよりよいものをつくりたいと考えている人材は多いですが、それをビジネスモデルに仕立てていくという点が相対的に弱い。技術を客観的に見て、あるいは複数の技術を統合し、自社だけでなくパートナー企業と一緒に世の中を変革するビジネスモデルを考案していける人材は当社も含め、日本企業にとって必要な人材だと思います。

──そうした人材をどう育成しますか。

社内にとどまらず、ダイバーシティな環境でさまざまな経験を積ませていきます。グループ会社や海外駐在、グループ外への出向、あるいは共同プロジェクトの中に身を置いて、外部の人たちと意見をぶつけ合うような経験をすることが重要です。管理職には「優秀な人材を自分の部署で抱え込むな」と言っています。

私は40代に入ってから中国駐在を経験しました。もともと国内営業出身で最初は鉄鋼会社を担当し、次に自分から外資の牙城の市場を担当したいと希望し、競合のシステムを置き換える部門に。非常に苦しみましたが鍛えられました。そこで次は海外をやってみたいとお願いしたのですが、これはなかなか実現できなかった。中国駐在の辞令が出たときは非常に嬉しかったですね。自分の枠を超えてチャレンジしているときは元気が出てきます。