これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、三井物産の安永竜夫社長のインタビューをお届けしよう――。

史上最年少で社長に就任して3年。最初の決算では創業以来初となる赤字に転落したものの、2017年には見事にV字回復を成し遂げた安永竜夫社長。あらゆるビジネスが変革期を迎えている今、独自の働き方改革と人材育成制度の整備を通じて、世界で働く社員の意識改革を図っている。

「競合はもはや同業他社ではなく、世界のメジャープレーヤーだ」

──2016年を「働き方の革新元年」として、変革に着手されています。その狙いを教えてください。

三井物産のビジネスは実に多種多様で、地球の裏側にいる相手と仕事をしている部門もあります。私も中近東やロシアを担当した期間が長かったのですが、会社に朝一番に来ても(時差の関係で)相手がいない。忙しくなるのは夕方からです。また中近東は日曜日が平日で、どんどん報告や連絡が日曜日に入ってくる。こうなると必然的に現地の仕事時間に合わせて働かざるをえません。こうした部署ごとに異なる事情を働き方に反映させるために、まず会社が、働く時間、場所などに自由度のある制度を用意し、あとはそれぞれの部署が、その範囲内でベストな働き方を考えてくださいという形を導入しています。

三井物産 社長 安永竜夫氏

──性別や国籍、家庭環境の違う人材が一緒に働くことによる相乗効果の創出にも取り組まれています。

これはもう後戻りできません。特に海外の事業会社、現地法人で活躍しているローカルスタッフの才能をいかに発掘し、教育し、三井物産パーソンとしてさらに活躍できるように育成するかというのは、当社の重要な課題になっています。

当社は連結従業員数が約4万2000人で、そのうち日本国籍の人は約1万7000人と、圧倒的に外国籍の人が多い。かつて彼らの多くは日本人のサポート役であったものの、今は海外の関係会社等で幹部になることも多く、名実共に「君たちが主役だ」と言っています。というのも三井物産の競合先はもはや同業他社ではなく、それぞれの業界における世界のメジャープレーヤーなんです。彼らと戦うには各地の事情を熟知し、場を仕切っていける人間が必要です。反対に日本の若手には、「君たちの競争相手はもう同世代の日本人じゃない、世界中の若者が競争相手だ」と言っているところです。