これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、伊藤忠商事の鈴木善久社長COOのインタビューをお届けしよう――。

資源価格に業績が大きく左右される資源分野から、非資源分野へと投資の軸足を移す総合商社。そのなかで、一歩先に非資源分野にシフトし、2015年度に純利益で業界トップに上り詰めた伊藤忠商事。この春、大躍進の立役者である岡藤正広氏(現会長CEO)からバトンを渡されたのが鈴木善久新社長COOだ。好調の伊藤忠をどのような集団に変えていくのか。

結果を出せる人が優秀、結果を出せない人はダメ

──競合他社を追いかける側から追いかけられる側になっての社長交代ですが、今後御社の求める人材像は変わりますか。

伊藤忠商事 社長COO 鈴木善久氏

何かを大きく変えるという気持ちはまったくありません。かつては特徴がわかりづらいと言われた当社ですが、岡藤会長CEOのもとで発信してきた「ひとりの商人、無数の使命」というコーポレートメッセージのとおり、まさに一人ひとりが商人であるというところで、他社にない独自の色が出せていると感じます。

繊維を得意とする大阪出身の商事会社である、という歴史に立ち返って岡藤会長CEOが引き出した当社の個性をさらに浸透させ、磨き上げていきたいと考えています。

──鈴木社長ご自身は、優れた人材とは何だとお考えでしょうか。

ビジネスにおいて人に求められるのは結果です。したがって結果を出せる人が優秀であり、結果を出せない人はダメ、ということになるでしょう。問題は「結果を出すにはどういう人でなければならないか」です。強い信念を持つことは当然ですが、そのうえで大切なのは「謙虚さ」だと私は考えます。仕事は1人でできるものではなく、さまざまな人とのお付き合いがあり、チームがあり、上司がいて部下がいて、その中でやっていくもの。人との接点のところに学ぶ気持ちがなければなりません。自分1人の力や知識はたかが知れているからです。人から学ぶには謙虚さが必要だということです。

──人との接点のところで謙虚さを重んじるのは、創業精神である商人に通じるものを感じます。

とはいうものの、総合商社の人間は自己主張が強く、口が達者な人間が多いわけです。

私も若い頃は意欲が空回りしていました。「こういうプロジェクトをやりたい」「アメリカにいい製品を見つけたから進めたい」と、一方的に思いをぶつけてしまって、相手の話を聞かない。先方が重要な情報を提供しようとしてくれているのに話の腰を折って聞きそびれてしまい、早とちりをする。派手に騒ぐ人ほど結果が残せないものです。そうした実体験から学んだのが、相手の話を「聞く」ことの大切さです。じっくり聞いて相手のいうことを理解すれば、早とちりすることはない。これは組織の上に行けば行くほど重要です。メンバーの言うことを聞いて、共有することが結果に繋がります。

とはいえ話を聞いただけでは、単に知識を得たにすぎません。知識をもとに自分なりに考えを組み立てて「知恵」に変えることが重要です。