──異なる立場・考え方の受容についてはどうか。

これからのビジネスでは、ダイバーシティ=多様性という概念がとても重要になると思う。立場や考え方、文化の違いにこだわらず、分け隔てせずに人と接する感性が必要だ。

多くの権利者の利害調整が主要な業務である不動産業では、とりわけそれが求められる。コミュニケーション力も、話術が巧みなどというのではなく、言葉に表れない相手の気持ちを汲み取る洞察力がより重要だ。私は人事畑が長かったが、採用ではその点に常に留意してきた。

私は、三菱地所で働くことにより、社員一人一人が自己実現を遂げられるよう、最良の環境を提供していきたい。そして、その環境を最大限に利用してくれる人財を育てていくのが務めだと考えている。

もっとも、個人的には、世界に打って出て勝ち抜いていけるような、三菱地所と組んでプロジェクトを遂行できるような社員は、どんどん外に出ていってもいいと思っている。少子化の流れの中では、企画力を持った人財を1カ所に留めるより、複数のいろいろな職場に属してその可能性を伸ばすほうがいい。そういう時代がやってくるかもしれない。

さまざまな課題の解決が迫られる時代、ビジネスはどんどんコラボレーション型になっていく。三菱地所もCAP(Corporate AcceleratorProgram=新事業創出のためのプログラム)をつくり、協業による新たな事業を、ベンチャー企業など外部から提案してもらっている。

新しい試みには当然、リスクがある。しかし、リスクを避けては何も生み出せない。失敗を恐れず、変革を起こそうという気概は、会社のみならず社員にこそ求められる。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地

1958年5月26日、福岡県北九州市
2 出身高校、出身大学学部
愛知県立旭丘高校、東京大学法学部
3 座右の銘、好きな言葉
雲の上はいつも晴れ、和して同ぜず
4 最近読んだ本
『阿修羅のごとく』向田邦子
5 尊敬する人
坂本龍馬、レオナルド・ダ・ヴィンチ
6 私の健康法
いつも明るく楽しく飲みニケーションすること
吉田淳一(よしだ・じゅんいち)
三菱地所 社長
1958年、福岡県生まれ。82年東京大学法学部卒業、三菱地所入社。2007年人事企画部長、11年ビルアセット業務部長、12年執行役員、14年常務執行役員、16年取締役執行役常務、17年より現職。
(構成=高橋盛男 撮影=永井 浩)
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