定年後の医療費や介護費の負担がますます重くなる……
多くの人は、「老後は現役時代のようなお付き合いが少なくなるはずだから、きっと支出は減るに違いない」と考えているのではないだろうか。これが、実は大いなる誤解なのだ。
フィデリティ退職・投資教育研究所では、07年に724人のシニア世代を対象にアンケートを実施した(図4)。そのとき、「1年間で年金以外にどのくらいのお金が必要だと思いますか?」と質問したところ、平均値が186万円だということがわかった。
そのうえで、「総額ではいくら必要ですか?」と質問したところ、それに対する答えは、平均値で3044万円だった。
この質問の意図は、「毎年、満足のいく生活をするのに必要な資金を、総額と年額で別々に聞いて、無意識のうちに何年持つと考えているか」を調べることである。
では、実際何年持つのだろうか。3044万円を186万円で割ると、出てきた答えは16.4年。つまり毎年これだけあれば十分と思われる額を、これだけ準備しておけば十分と思われる資金総額から取り崩した場合、16年とちょっとで資産が底をついてしまうわけだ。
仮に60歳で定年を迎え、16年経ったときの年齢は76歳。後期高齢者になったばかりで、お金がかかってくる。おそらく病気をしがちになるので医療費がかさみ、年金額が減額される恐れもある。貯えが減るだけでなく、唯一のキャッシュフローである年金も減額されたら、相当のプレッシャーになる。
「そこは何とか節約することによって……」と考えている人もいるだろう。が、リタイアしたからといって、そうそう生活に必要なお金は減らないものだ。