これについては、07年に行った「退職前後の経済生活について」というアンケート調査の結果を紹介しておこう(図5)。
この調査では、退職前と退職後とで、生活費が増えたのか、それとも減ったのかを質問している。すると、60歳前後の人のうち生活費が下がると思っていた人の割合は全体の69.3%だったが、実際にセカンドライフを送っている60代前半の人を対象に同じ質問をしたところ、実際に下がったと答えた人の割合は、全体の54.7%だった。つまり、思ったよりも生活費は下がらないということだ。
米国のケースになると、もっと格差が大きくなる。06年に米国のフィデリティ・インベストメントが行った調査によると、退職前の予想では48%の人々が「退職したら必要経費は下がる」と考えていたのに、実際に退職してみると、下がった人は33%にすぎなかった。米国の場合、退職すると医療費が自己負担になってしまうからだ。
そして、これは日本の未来の姿になる恐れがある。後期高齢者医療制度によって、75歳以上の人たちも保険料の本人負担が強いられるようになったからだ。介護費用も含めて医療費負担がさらに重くなったとすれば、付き合いが減るからといって老後の必要経費負担が軽くなることはない。この点は十分に考慮しておく必要がある。
それらを考慮したうえで、少しでも手持ちの資産を長持ちさせることを考えなければならない。
(構成=鈴木雅光)