新NISAのスタートを控え、「もう定年だから、これから始めても遅いのではないか」という声がある。退職世代はいったいどうすればお得なのか。あるいは、損をしないのか。近刊『60代からの資産「使い切り」法』が話題のフィンウェル研究所代表の野尻哲史さんは「退職世代が新NISAを有効活用するうえで、4つの課題がある」という――。

新NISAは本家・英国ISAに遜色ない資産形成ツール

NISA(少額投資非課税制度)は、英国ISA(個人貯蓄口座)を参考に2014年に導入されました。現在、ISAの年間拠出上限額は2万ポンド。仮に1ポンド=180円で換算すれば360万円です。

2024年から始まる新NISAの年間拠出上限額は、この金額と同じです。またISAは非課税期間・制度ともに恒久化されていますが、新NISAも同様に恒久化・無期限化となります。

ついに、日本のNISAも英国ISAと遜色のない素晴らしい制度になりますから、資産の形成途上にある「資産形成世代」にとっては、使いやすい、そして使う意味のあるものといっていいでしょう。

ペンを使って投資の成長グラフを描くビジネスマンのイメージ
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
※写真はイメージです

60代後半以降が新NISAを活用するには課題がある

ただ、すでに資産を作り上げていて、これからその資産を使って退職後の生活のかてにしようとする世代、たとえば60代後半以降の世代には、新NISAにもまだまだ課題があります。

なお、この世代は、資産を取り崩して生活費に充当する世代であるため、私は「資産活用世代」と命名しています。以後、この呼び方で進めます。

もちろん制度の恒久化と非課税期間の無期限化は、資産活用世代にとっても十分大きなメリットがありますが、ここ10年ほどの英国ISAが、口座保有者の高齢化に対応して改正を進めてきた点をもっと考慮すべきだと思います。

とはいえ、その改正を待っているわけにはいきません。差し当たり、われわれにできる対策を考えてみます。