配偶者の死後のNISA口座の問題

3つ目の課題は、高齢期の、配偶者間の資産の共有という視点です。

英国には「相続ISA」が導入されています。配偶者が亡くなった際にISAの口座残高相当額を、残された配偶者の翌年の拠出額に一時的に上乗せするというアイデアです。

高齢世帯が多い日本でこそ、新NISAでもこうした制度が導入され、高齢世帯の資産の有効活用が図られるのは重要だと思います。

この対策は、制度が導入されない限り難しいものです。ただ、配偶者が亡くなったあと、残された方の生活費を充実させるという視点で考えれば、夫婦ともに新NISA口座を開設することが重要になります。

とくに平均余命の長い女性には重要なポイントといえるでしょう。

資金の自動移管ができない

新NISAにはもう1つやっかいな問題があります。資産活用世代では、すでに一般NISAを活用している人は多いと思いますが、現在の一般NISAから資金を新NISAに自動で移管できないのです。

もちろん、「それが資産形成世代にはメリットだ」といわれる面もあります。

非課税期間が20年のつみたてNISAで資産形成している人は、その口座にある資産はそのまま残りの年数を非課税で運用できます。そのうえに新NISAでの口座開設も可能ですから、新NISAとサブの非課税口座(現在のつみたてNISA)を持っているような感じでしょう。

ただ、資産活用世代では、つみたてNISAではなく、一般NISAを主に使っている人が多いはずです。

一般NISAの場合には、2023年末で非課税期間が終了する資金があります。これを新NISAに移すには、2023年末に期限が来る有価証券を一度売却して、新しい口座で購入し直すという手間が必要になります。手作業による資金の移管です。