最初の5年間にいくら引き出すかで命運が分かれてゆく
特に60歳で定年を迎えた人の場合、何も仕事をしないで満額の年金をもらおうとしたら、65歳まで受給を待たねばならないのだ。その間は、それまでに蓄積した資産を取り崩すことになるわけだが、ここで注意しなければならないのが、最初の5年間で引き出す額を可能な限り抑えておくことだ。
同じ3000万円の資金を、3%で運用しながら引き出して使う場合、最初の5年間に月25万円を引き出し、65歳以降は年金受給を考慮して月10万円の引き出しにした場合、84.3歳で3000万円すべてが底をついてしまう。しかしながら、最初の5年間我慢して引き出す額を12.5万円に抑えれば、65歳以降の引き出し額が同じでも、93.4歳まで持たせることができるのだ(図6)。
3つのステージに老後の時間を分けて考えてみよう
年金受給額は減り、医療費負担増で支出は増え、そのうえ、日本経済の低成長によって思うように所得は上がらない。これではなかなか老後の生活資金を準備することもままならない。
だからこそ本気で運用を考える必要がある。まずは、3つのステージに分けて考えるといい(図7)。現役時代(60歳まで)は「働きながら運用する時代」、60歳から75歳までは「使いながら運用する時代」、75歳以降は「使う時代」だ。
現役時代は、とにかく資産を積み上げること。外部からのキャッシュフローが得られるのは、この時期しかない。仕事で得たお金の一部は、ドルコスト平均法を有効に活用して、毎月定額でリスク商品の積み立て、投資を行い、その部分には極力手を付けないことだ。
60歳から75歳までは、公的年金を生活費に充てるとともに、足りない分はこれまで積み上げてきた資産の一部を取り崩していく。特に最初の5年間は、前述したように、取り崩す額を最小限に抑えること。それとともに、並行して運用で資産を増やし続けていけば、それだけ資産を長持ちさせることができる。
そして75歳以降になれば、徐々に気力も衰えてくるはずだから、リスクを取って運用するような無理はせず、築きあげた資産を費消しながら余生を送る。これができるところまでは何とかもっていきたい。50歳の人ならまだ25年間も運用期間がある。今から長期分散投資を心がければ、老後の勝ち組になれる可能性は十分にある。