貧しい移民家庭の生まれから米軍トップに上り詰めたコリン・パウエル。その勇敢さは「伝説のリーダー」として知られているが、そんな彼にも苦しくてくじけそうになることがあった。そのときパウエルはどうしたか。鏡に向かって、ある映画の名セリフを唱えることで、自分を励ましていたという。パウエルが著書で紹介している「13カ条のルール」から2つを紹介しよう――。
2004年7月、ASEAN地域フォーラムに出席するためインドネシア・ジャカルタの空港に降り立つ国務長官当時のパウエル(写真=AFP/時事通信フォト)

※本稿は、コリン・パウエル/トニー・コルツ著、井口耕二訳『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

ルール1:なにごとも思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。

こうなる場合もあるし、ならない場合もある。どちらでもいいだろう。これは心構えの問題であって予測ではないからだ。私は、状況がどれほど厳しいときも自信を失わず、楽観的な姿勢を保つように心がけてきた。何かに感染しても、一晩ゆっくり休めば8時間後にはその影響がやわらぐことが多い。夜、自分は勝利に向かって歩んでいると思いながら職場をあとにすると、自分以外にもよい影響を与えられる。部下にもその姿勢が伝わり、どのような問題でも解決できると信じさせることができるのだ。

陸軍兵学校では、陸軍士官にできないことはないとくり返したたき込まれる。「われわれに難しすぎる問題などない。われわれに乗り越えられない困難などない」という具合だ。英国は「決して、決して、決してあきらめない」と世界に宣言したチャーチルを思いだしてほしい。もっとくだけた表現をするなら「畜生どもにやられるな」というところだろうか。

「ものごとは必ずよくなる。自分の力でよくしていける」――そう信じてわれわれは陸軍兵学校を卒業したし、私はその後もずっとそう信じてきた。否定的な証拠を突きつけられることも多いのだが。

別パターンもたたき込まれた。「士官たるもの、死にそうなほどに空腹でも、そのようなそぶりを見せてはならない。食事は最後にとること。寒さや暑さでへばりそうなときも、そのようなそぶりを見せてはならない。怖くてしかたがないときも、そのようなそぶりを見せてはならない。士官はリーダーであり、兵は士官と同じ感情をいだくからだ」。状況がどれほどひどく見えても、自分たちのリーダーなら事態を改善してくれると、部下に信じさせなければならない。