スマホの修理もシェアリングで

スマホ修理を注文できるアプリの一例

日本ではスマートフォンが割れたまま修理をせずに使っている人をよく見かけるが、中国ではスマホの修理さえもシェアリングでできるから驚きだ。先日、中国に出張していたときに、スマホの充電器差し込み口が壊れて充電できなくなり、困ってしまった。すると一緒にいた現地の友人が、「ちょっと待ってて」と言って、スマホのアプリで何かを注文した。10~20分くらいたったころ、人がやってきて筆者の壊れたスマホを預かってくれるという。セミナーを聞いている間の1時間くらいで修理は終わり、直したスマホを持ってきてくれた。

これも、スマホを修理したい人と修理ができる個人をつなぐシェアリングアプリ上でできることだ(中国人は「平台」(ピンタイ=プラットフォーム)と呼んでいる)。何分で修理ができるかがアプリに表示されるので、それを選ぶ。無料でスマホを取りに来てくれて、修理後も届けてくれるので、かかるのは修理代だけである。

以前だとスマホを渡すと盗まれるのではないかと思っていたものだが、AlipayやWechat Payを使ってスマホで決済をするのだから後で追跡されるわけだし、盗むことはないだろう、と安心して手渡した。こういうところからもさまざまな新しい事業が、複合的に起こっていることを感じる。

こうやってさまざまなシェアリングサービスを目の当たりにすると、その便利さや新しさに目を奪われ、「中国ってすごい」と感心するところで止まってしまうことがある。だが大切なことを忘れてはいけない。なぜ中国で多種多様なシェアリングサービスが普及したのか? それは、昼食を宅配したり、車を運転したり、スマホの修理をしたりといった仕事を安価に請け負う人々がいるからに他ならないということだ。

出稼ぎ労働者「外地人」

上海で「餓了嗎?」の昼食を運んでいるのは、地方都市や田舎から出稼ぎにやってきた「外地人」(ワイディーレン)と呼ばれる人たちだ。外地人と呼ばれる彼らは、以前は工場などに勤めており、中国経済の発展を支えていた。最近ではIT経済やシェアリングサービスが台頭し、今は手持ちの自転車やバイクを使い、昼食の宅配を個人で行っている人も多い。

私が乗ったUberの運転手も、外地人だった。真夜中に2時間ほど運転し、その後また2時間かけて帰らないといけない行程で、「上海人は絶対にこんなことはしない」と話していた。「外地人」は都市部に土地を持っておらず、高い家賃や生活費を払うには、その分一生懸命働かないといけない。改めて、上海人と外地人の違いを思い知らされた瞬間だった。中国のGDPは日本を追い抜き世界第2位となったが、貧富の差はいまだ激しい。安い収入でも仕事を請け負う働き手が多くいるということが、中国でこうしたシェアリングサービスが普及する背景としてあるのだ。