東京や大阪のオフィス街では、お昼どきに街へ繰り出す人をよく見かける。一方、上海など中国の都市部で働くビジネスマンは、昼食を取りに外出することがめっきり減っているという。聞けば、オフィスを出ることなく、出前をとって昼食を済ませるのが主流となっているというのだ。
背景には、出前アプリ「餓了嗎(アーラマ)?」(=お腹すいた?)の爆発的な普及がある。「餓了嗎?」はこの1~2年に、上海を始めとする都市部に普及した。このアプリを使えば、どこのレストランの料理でも取り寄せられるようになる。上海でお昼ごはんを食べようとすると、一食20~30元(約340~510円、2018年3月現在)ほどだが、驚くべきはその宅配料金だ。1回2~3元(約34~51円)、つまりご飯代に1割ほど上乗せするだけでどこのランチでも届けてくれるのだから、その安さゆえ、あっという間に普及するのもうなずける。
日本では、アメリカ発のシェアリングフードデリバリーサービス「Uber Eats」が都心など一部都市で展開されている。送料は一律380円(https://about.ubereats.com/ja/tokyo/faq/)なので、少し特別なときに頼むイメージかもしれない。だが、上海における「アーラマ?」は、普通のお昼ご飯に毎日頼むイメージだ。
本連載では前回、急成長するシェアリング自転車のビジネスモデルや文化に焦点を当てたが、今回は、中国で普及している他のシェアリングサービスにも目を向け、こうしたビジネスを支える個人や社会背景について紹介したい。
タクシーよりも高級なシェアリングカー
以前筆者が中国に住んでいたころ、現地のタクシーといえば、運転が荒っぽく、お世辞にもきれいとは呼べない印象だった。しかし最近は、中国でタクシーを利用することはほとんどない。シェアリングカーサービスを利用するからだ。私や友人たちが利用しているのは「滴滴打車」(ディディダーチャー)という、「Uber」のようなシェアリングカーサービス。専用アプリから配車を頼めるし、タクシーよりも高級な車に乗れることが多い。料金はタクシーに比べ2割ほど高いが、その人気は高い。私が乗ったUberの運転手はスーツを着ており、車内はとても清潔感があった。