教科書にはない現場の知識
決算書の読み方についてはすでにさまざまな書籍がでているし、自分はもう習ったから大丈夫という人も多いと思うが、本誌では、その一歩先をいき、教科書的な見方だけでない、現場にいたからこそわかる、本当の決算書の見方を知ることができるのも特長だ。
たとえば、特集記事PART2内で取り上げた「倒産の前触れ」は、倒産リスクの高低をどう決算書から読み解くのかという話なのだが、一般的には、短期的な倒産リスクをチェックするには、資金繰りに詰まらないよう、より現金に近いものから見ていく。つまり現預金やすぐ現金化できる有価証券などを足して、月商で割った手元流動性を見るのというのが鉄則だ。
だが、今回お話を伺った日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門・主席研究員の小谷和成氏は、「会社が倒産するのは資金繰りに行き詰るからだ。借入金が返済できず、手形が半年に2度不渡りになれば、銀行取引もできなくなり、融資もしてもらえず、経営は継続できなくなる。そのため、倒産リスクを測るには、銀行の立場で考えるとわかりやすい」という。
そして「まず見るべきは、純資産と借入金の比率」であり、業界特性も加味しつつ、借入金の総額が「返済の原資となる営業キャッシュフロー(CF)1年分で割ると、何年で完済することができるか」を掴むことだという。
元銀行マンで、公認会計士として監査法人にも勤めた経験のある小谷氏の話はさすが実践的だと感じた。
身近な話題でいえば、こっそりと、しかし必読いただきたいのは、PART3「経理・人事が秘密にしたい話」だ。
接待で使えるお金はなぜ1人あたり5000円以下なのか。合コンや、あるいはキャバクラを会場にした、ビジネスとは無関係の集まりに参加した場合、飲み代は「勉強会」として経費で落ちるのか。会社から貸与された業務用の携帯電話やスマホ、タブレットを紛失したらどうなるのか。会社の年賀状が「お年玉」くじに当選した場合、自分のものにしていいのか。会社の経費で宿泊した際に、「おまけ」のプリペイドカードを受けとったが問題行為だったのか。
本章を読んで、日頃の悩み事を一挙解決してほしい。