時にはモチベーションになり、時には人を暗い気持ちにもさせる、お金。「プレジデント」(2018.4.2号)の特集「日本人の給料、貯金、老後のお金 全対策ノート」では、「新しいお金の常識」から財産問題まで、お金にまつわる幅広い話題を提供しています。今回は気になる年金制度の行方について、担当編集がその内容をご紹介します。

誰もが抱える老後の不安

「老後の●●」。

この文を見て、あなたは「●●」の部分に何の単語を入れるでしょうか?(何文字でもかまいません)

「生活」「楽しみ」「生き方」……。どんな単語を入れてもいいはずです。しかし、多くの人は「生活費」「資金」の言葉が、頭をよぎったのではないでしょうか。私は今40代で老後を迎えるのはまだ先の話ですが、「蓄え」という単語が係り結びのように浮かびました。今、誰もが心の片隅で「老後のお金を準備しなければ……」という不安を抱えながら、日々を過ごしているような気がします。

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個人的に、老後のお金に関して圧倒的な不安を感じるのが、年金制度です。これまでコツコツと払い続けてきましたが、ある日突然、制度が破綻して、「大変申し訳ありません。お支払いすることができなくなりました」という事態が訪れたら……。年金未納問題や人口減少のニュースにふれるたび、嫌な予感が胸をよぎります。

はたして日本の年金制度は一体どうなるのか? 今回の特集内の記事で、その行方について香取照幸さんに解説してもらいました。香取さんは、元厚生労働省の官僚。年金を改革し、介護保険をつくったことから「ミスター社会保障」「ミスター年金」とも呼ばれる人物です。

さぞかし難しい話になるかと思いきや、その説明は実にシンプルでした。

「公的年金制度の基本的仕組みは『働いている現役世代が生み出した付加価値を、生産から退いた高齢者に配る』ことです。公的年金制度は、よく『肩車』や『騎馬戦』などにたとえられますが、『働いている人が働いていない人を含めた全人口を支える』という意味では公的年金も普通の社会と基本構造は同じです」
「公的年金は『付加価値の分配』ですから、経済の実力以上の年金制度というのはありえません。もし現役世代が負担に耐えきれず年金が潰れるというときが来るとしたら、その前に日本経済が潰れているはずです。逆に言えば、日本経済が潰れない限り、公的年金は潰れません」