北朝鮮のたくらみをどう裁くのか
安倍晋三首相が、韓国のピョンチャン・オリンピック(平昌五輪)の開会式に出席する考えを示した。
安倍首相の出席は、日韓の慰安婦問題における文在寅政権の新方針を容認するかのように受け取られかねないとの慎重論がある一方、欠席すれば日韓の冷え込みを内外に強く印象付けることになるとの意見もあった。
一国の首相の動きが注目されるのは当然である。しかし今回は、韓国の冬季五輪に日本の首相が顔を出すか、出さないかという決断にはかなり高度な政治判断が必要だった。
日韓の慰安婦問題だけではない。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮には、五輪を利用して日本と韓国の間にクサビを打とうとする思惑があるからだ。
安倍首相は1月23日、出席する考えを明らかにするとともに慰安婦問題をめぐる日韓合意について「新方針を受け入れることはできない」と直接韓国の文大統領に伝える意向も示した。
今回の安倍首相の訪韓は、日本の外交手腕の見せどころである。新聞各紙の社説はこのあたりをどう解説しているだろうか。
朝日は「当然の判断」ときっぱり
1月25日付の朝日新聞の社説は冒頭部分から「当然の判断である」と言い切り、その理由をこう述べる。
「東アジアはこれから平昌を皮切りに、東京、北京と2年ごとに五輪の舞台となる。そのスタートの式典に日本の首相の姿がなければ、何とも不自然だろう」
「何とも不自然」という表現は朝日社説らしいが、沙鴎一歩には少々鼻につく。
それなりの地位にある人物を安倍首相の代理としていかせる手もあった。韓国側もその可能性を承知していただろう。それだけに韓国側は、安倍首相の決断を重く受け止めているはずだ。
自国の利益を優先するのが外交
さらに朝日社説は「自民党の一部には、最近の慰安婦問題をめぐる韓国の動きに反発し、出席に否定的な声がくすぶっている」と指摘し、こう主張する。
「政府間の摩擦を理由に、五輪の式典参加を左右させるのは不見識だ」
「国際的な対立や困難を乗り越える平和の祭典の実現に最大限協力するのが、日本のあるべき姿である」
「日韓両政府の関係を立て直すうえでも、首相の訪韓は好ましい。この機を逃さず、文在寅大統領と腹蔵のない意見交換を図り、異論があっても自然に対話できる関係を築くべきだ」
なるほど。朝日社説の主張は正論かもしれない。しかし外交は朝日社説が主張するような理想通りには運ばない。自国の利益を優先して交渉を進めていくのが外交だからだ。そのことを踏まえたうで、安倍外交に期待したい。