季節性インフルエンザが、今年も流行している。対策にはワクチンの接種が効果的だが、日本では昨年ワクチンの供給不足が問題になった。ワクチン不足で接種が遅れた人が多くでた。原因はどこにあるのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は「日本のワクチン製造は、欧米に比べて非常に効率が悪い」と指摘する――。

患者数は例年の同時期に比べて多い

正月休みが終わって会社や学校が始まり、人の動きが活発化すると、毎年、インフルエンザが流行のピークに達する。

インフルエンザウイルス H1N1(写真=iStock.com/bodym)

日本医師会などが全国1万カ所の薬局のインフルエンザ治療薬の処方数から推定するインフル患者数は、昨年12月18日~24日までの1週間で約38万人だった。これは例年の同時期に比べて多いという。

一方、国立感染症研究所(感染研)によると、全国約5000カ所の医療機関からの報告を受けて推定した今期のインフル患者数は昨年11月26日までの1週間で約7万人となり、厚労省は12月1日に全国で流行入りしたと発表した。その後、患者数は増加を続け、12月17日までの1週間は約35万人と推定された。

予防には(1)手洗い(2)普段からの健康管理(3)ワクチンの接種などが求められる。個人個人が感染することを防いで感染を広げないことが大切である。

昨年12月には朝日新聞と読売新聞が社説のテーマに取り上げ、注意を呼びかけた。

突然走り出すなどの「異常行動」も

12月6日付の朝日社説は「この冬もインフルエンザが全国的な流行期に入った」と書き出し、「それに先立ち、未成年者を中心にインフルエンザにかかったときに起きることがある異常行動について、厚生労働省が注意を呼びかける通知を出した」とマンションから飛び降りるなどの患者の異常行動を取り上げている。

朝日社説は「国の研究班によると、突然走り出すなど重大な事故につながりかねない行動が、昨シーズンだけで53件確認された」と指摘したうえで、通知の予防策について「医師や薬剤師が患者・家族に確実に伝えるとともに、とりわけ子どものいる家庭は十分に注意を払ってもらいたい」と呼びかけている。

問題はタミフルなどのインフルエンザ治療薬が異常行動の原因なのか、それとも薬の服用に関係なく、インフルエンザ患者全体にいえることなのか、である。

この点に関し、朝日社説は次のように書いている。

「因果関係について結論が出ないまま、厚労省は発症から最低2日間は患者を一人にしないよう通知し、10代の患者にはタミフルの処方を原則として控える措置が、今もとられている。関係者は引き続き、薬が異常行動のリスクを高めることはないのか慎重に検証する必要がある」