感染力の強さと重症化の怖れ

インフルエンザの流行が始まり、各地で学級閉鎖になる小中学校が出てきた。例年12月から大流行するウイルス感染症だが、今シーズンは11月後半に流行が始まり若干出足が早い。

一般的なかぜと異なるのは、感染力の強さと重症化しやすいこと、そして、ウイルスが原因の病気としては珍しく治療薬があることだ。典型的な症状は、38度以上の高熱、筋肉痛、頭痛、関節痛といった全身症状で、のどの痛み、咳、鼻水を伴う場合もある。

インフルエンザかどうかは、多くの医療機関で「迅速抗原(インフルエンザウイルス)検出キット」などを使った検査で比較的簡単に診断できる。鼻の奥かのどに綿棒を入れて粘液を採取して検体処理液に入れ、それをキットにつけて反応を見る検査法だ。鼻の奥に綿棒を入れられるのは大人でも不快なので、子供は鼻水で検査をする場合もある。10~15分ほどで検査結果が出て、インフルエンザA型、あるいはB型なのか感染したウイルスのタイプも判定できる。検査には保険がきき、初診料と検査料、薬の処方料と合わせると3割負担の人で2000円弱かかる。

検査で大事なのはタイミング。発熱してから12時間以上たっていないと、まだウイルスがそれほど増えていないためにインフルエンザに感染しているのに、「陰性」になる場合があるからだ。ただ、抗インフルエンザ薬が有効なのは、発症してから48時間以内に薬を使い始めたときなので、遅すぎても検査を受ける意味がなくなってしまう。

インフルエンザ治療薬には、オセルタミビル(商品名・タミフル)、ザナミビル(商品名・リレンザ)、アマンタジン(商品名・シンメトレルなど)、ペラミビル(商品名・ラピアクタ)、ラニナミビル(商品名・イナビル)の5種類ある。オセルタミビルとアマンタジンは内服薬、ザナミビルとラニナミビルは吸入薬、ペラミビルは点滴薬だ。

オセルタミビル(タミフル)は1日2回5日間服用する飲み薬だが、10歳以上の未成年では、服用後に異常行動を起こして転落するような事故があったため、重症例を除き原則的には10代への投与は控えられている。ザナミビル(リレンザ)は1日2回5日間、ラニナミビル(イナビル)は1回だけ吸入する薬で、きちんと吸入できれば一般的には1~2日で熱が下がり始める。アマンタジン(シンメトレルなど)はパーキンソン病の治療薬でもあり、インフルエンザB型には効果がないとされ、薬がきかない耐性ウイルスが生じやすいことから、最近ではあまり使われなくなっているようだ。ペラミビル(ラピアクタ)は点滴薬なので、薬の内服や吸入ができない重症者用である。

なお、エボラ出血熱の治療薬候補として注目されている「ファビピラビル(商品名・アビガン)」も抗インフルエンザ薬として承認されているが、この薬は、現在使用されている薬が効かない新型のインフルエンザなどが発生し、国が必要と認めたときに使用されることになっている。そのため、現在は流通していない特殊な薬だ。