本当に異常行動の原因は薬なのか?

患者を一人にしない措置はいいだろうが、ことさら治療薬原因説を強調するのはどうだろうか。効果ある治療薬が台無しになってしまう。そう考えながら読み進むと、朝日社説はこうも指摘する。

「留意すべきは、異常行動は薬の種類や服用の有無にかかわらず、報告されているということだ。インフルエンザの症状として誰にでも起こりうると考え、備えなければならない」

専門家や研究者の間で結論が出ない以上、仕方がないといえばそれまでなのだが、ただ社説でここまで異常行動を問題視して書く以上、朝日新聞としては因果関係をどうみているか、子供を持つ親の立場に立ってもっと分かりやすく書いてほしかった。

沙鴎一歩が複数の専門家から取材した話をもとに考えると、問題の異常行動は薬の服用に関係なく、インフルエンザ特有の症状だと思う。そのことを念頭に置いて対処すべきである。ただし異常行動が起きている以上、注意を怠ってはならない。

上位10県のうち、埼玉以外は西日本

12月28日付の読売社説はその前半でインフルエンザの流行を具体的に指摘している。

「約5000の医療機関から報告された今月11~17日の患者数は、1機関あたり7.4人で、前週より8割も増えた。昨年よりやや早めのペースだ」
「都道府県別で最も多いのは、長崎の18.94人だ。岡山、宮崎と続く。上位10県のうち、埼玉以外は西日本の県が占めている」

さらに読売社説は「学級閉鎖が目立っていた小中学校は、冬休みに入っている。年末年始には、家族間などでの感染拡大が懸念される」と指摘するが、実にその通りなのである。

年末年始に田舎や実家に帰り、仕事や学校が始まる前に再び生活拠点に戻ってくる。この年末年始の大移動が感染を拡大させる。とくに感染は満席状態の新幹線や航空機の中で広がる。小中学校が始まると、学校→家庭→会社と感染拡大に拍車がかかる。

今冬の流行のペースは速いといわれるだけに、こうした感染拡大が一挙に進む危険性もある。それだけに心臓病や腎臓病などの持病のある健康弱者や高齢者は注意が必要だ。

厚生労働省はワクチンの安定供給に努めよ

「未成年者の場合、窓から飛び降りるといった異常行動が、まれに報告されている。抗ウイルス薬の服用との関連が疑われているが、因果関係は今のところ不明だ」
「高熱が出たら、服薬の有無にかかわらず、子供を一人きりにしないことが必要だろう」

このように読売社説も異常行動に触れているが、朝日社説ほどではない。

続けて読売社説はワクチンの問題を取り上げる。

「今シーズンは当初、ワクチンの供給不足が問題となった」
「国立感染症研究所が、昨シーズンの流行などを参考に、ワクチンに用いる4種類のウイルスを選び、メーカーが春から製造を始めた。そのうち一つのタイプがうまく作れず、供給が滞った。在庫が底をつく医療機関が相次いだ」
「ワクチンは、予防に加え、重症化を抑える働きがあるとされる。効果を発揮するには、接種から2週間を要する。インフルエンザの流行は例年、1月中旬に本格化する。早めの接種が肝心だ」

ちなみに朝日社説も「ワクチン不足を教訓にして再発防止に努めるべきだ」などと主張しているが、読売社説は社説の最後で「厚生労働省は、ワクチンの安定供給に努めてもらいたい」と厚労省に明確に要求している。