厚生労働省が1月30日、健康増進法改正案の骨格を公表した。改正は受動喫煙対策の強化が狙いだったが、昨年3月に公表され、廃案となった法案からは、内容が大幅に後退している。この基準では都内の9割の飲食店では喫煙可能のままとされる。飲食店などでの禁煙はどうあるべきなのか――。
朝日新聞の社説(2月1日付)。見出しは<受動喫煙法案「対策を徹底」はどこへ>。

分煙では「たばこの害」は防げない

これでは骨抜き法案と批判されても仕方がない。

厚生労働省が1月30日、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の骨格を公表した。今年3月にも通常国会に提出されるというのだが、昨年3月に公表された厚労省の法案から大幅に後退している。国際標準からも大きく逸脱している。

飲食店に対し原則禁煙としながら「喫煙」や「分煙」の表示を義務付けて喫煙を認めるという内容で、これだと都内の9割の飲食店が喫煙可能となる。「9割ありき」で決まった基準なのだろう。昨年3月の厚労省法案で喫煙を認める店舗は、店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックに限られていた。

この法案について、私の知り合いの医師は「喫煙は循環器や呼吸器の病気の原因になる。海外では全面禁煙がどんどん進んでいる。時代錯誤も甚だしい」と嘆いていた。

「百害あって一利なし」というのがたばこである。喫煙は間違いなく健康を害する。年間1万5000人が受動喫煙で命を落とすとの調査データもある。分煙でたばこの煙を防げないことは、科学的に証明されている。国際的にも屋内全面禁煙が常識だ。「屋内全面禁煙」にするのが正しい。

今回、どうして法案が後退したのか。飲食店などの禁煙は本来、どうあるべきなのか。新聞各紙の社説を読み比べながら考えてみた。

「これではとても『対策』とは呼べない」

2月1日付の朝日新聞は「『対策を徹底』はどこへ」の見出しを掲げ、2日前に公表された受動喫煙防止の厚労省法案について「何のことはない。規制に抵抗する自民党議員らの考えを、ほとんど丸のみした内容だ」と手厳しく批判する。

まさしくその通りである。

昨年3月に公表された厚労省法案は自民党からひどくたたかれ、国会提出もままならなかった。厚労省はどうしようもなくなり、最後は国会提出を見送った。こうした経過があるのだ。それを踏まえたうえでの朝日社説の批判は、当を失するようなことはない。

ちなみに朝日社説の書き出しはこうだ。

「『受動喫煙防止対策を徹底します』。安倍首相は先週の施政方針演説で力説した。だが、これではとても『対策』とは呼べない。出直すべきだ」

「対策とは呼べない」という指摘もその通りだし、安倍首相演説のいいかげんさがよく分かる。