韓国政府と軍との30年にわたる確執
最近、韓国メディアが文在寅(ムン・ジェイン)大統領を批判しはじめました。大統領の対北朝鮮への外交姿勢はあまりに弱腰で、本当に危機に対応できるのかという懸念が国民の間で生じています。韓国の中央日報は社説で、「軍事オプションなしで、北朝鮮は対話に応じないだろう」との見解を表しています。
文在寅大統領は11月29日の北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射後も、北朝鮮への人道支援を続ける意向で、国際世論の批判も浴びています。
文大統領は軍事オプションを否定しながらも、12月1日、金正恩を狙う「斬首部隊」である特殊任務旅団を結成させています。しかし、結成を公表すること自体、既にやる気がないのではないか、あるいは国内の批判派への懐柔策にすぎないのではないか、という声もあります。
韓国では、朴正熙、全斗煥、盧泰愚の三代にわたる軍人政権の後、文民政権は軍の勢力をどう抑えるかということを至上命令としてきました。北朝鮮との融和を目指す「太陽政策」を掲げ、「北の脅威」をかき消し、軍に出番を与えず、彼らをひたすら抑えたのです。
民政復帰後の韓国政治において、政権と軍との確執は常に少なからずあり、政府の外交姿勢に影響を及ぼしました。政権にとって、軍の存在は一種のトラウマのようなものです。
軍内に秘密組織を作ってのし上がった全斗煥
そのトラウマの中でも、最も新しく、消すことのできない記憶が1979年の軍事クーデターから1980年の光州事件に至る出来事です。この一連の軍の暗躍と恐怖政治を主導した人物が全斗煥(チョン・ドゥファン)でした。
全斗煥は朴正熙の寵愛を受け、台頭した軍人です。1984年、戦後の韓国大統領として初めて日本を訪れました。全斗煥は陸軍士官学校での成績はあまり良くなく、実務にも疎く、頭の切れる人物ではありませんでしたが、朴への忠誠心だけは人一倍でした。