ここでも展開されるのは理想論
朝日社説は2年前に結んだ慰安婦問題をめぐる日韓合意の履行について「両政府とも率直な対話を厭わず、それぞれが自国民に向かって両国関係を前進させる価値を説く機会を増やすべきだろう」と述べる。
これもその通りなのだが、「率直な対話」を実現するにはどうすべきか。この点についてもっと具体的な解説と主張がほしい。
北朝鮮問題については「金正恩政権が韓国との対話に乗りだす局面が新たに生まれている」と指摘し、「これを本格的な緊張緩和につなげるには、やがて米朝、日朝の対話へも導く必要がある。その意味でも日韓と米国の緊密な意思疎通が欠かせない」と訴える。
ここでも展開されるのは理想論だ。朝日社説としては日本、韓国、米国の緊密な意思疎通のためになにが必要だと考えているのだろう。読者はもっと具体的に論じてほしいと思うはずだ。
日本の肉を切らせ、韓国の骨を断て
朝日新聞とスタンスを真逆に置く産経新聞の社説(主張、1月25日付)はどう書いているのか。
「首相が隣国で開かれる五輪で『選手団を激励したい』というのは本来なら自然なことだろう」と述べたうえで、「快く訪韓できる環境を損なってきたのは、ひとえに韓国に原因がある」「あたり前のことだが、『最終的かつ不可逆的な解決』をうたった合意は変わりようがない」と明言する。見出しも「合意は変わりようがない」である。
一見分かりやすいが、書き方が少しばかり巧みなだけである。
朝日社説が「安倍政権が、合意ですべてが解決したかのように振るまうのは適切ではない」と強調するのとは逆で、譲り合いの精神に欠ける。いくら外交が自国の利益優先といってもあからさまにそこを出しては、交渉は成り立たない。
韓国に日本の肉を切らせる一方、日本が韓国の骨を断つような外交が必要なのだ。
北朝鮮のしたたかさを逆手にとれ
さらに産経社説は「文政権は、歴史問題と外交や経済関係は別などとしているが、約束を守らぬ国との信頼関係など築きようがない」と韓国側を手厳しく批判する。
安倍首相に対しても「批判を承知で行く以上、文氏の態度を変えさせる強いメッセージを発しなければなるまい。腰の定まらない外交姿勢では足元をみられる」と叱咤激励する。
これには安倍首相は喜んだはずである。ただ産経社説をいいことに強気の姿勢で韓国外交に臨むのはまずい。あくまで表面は穏やかに見せる必要がある。