それだけではない。ひと言でも貴乃花の肉声を聞きたいと群がり、すがる週刊誌を利用して、貴乃花から聞いたと称する後援者、タニマチ、支援者が、相撲協会や白鵬を筆頭とするモンゴル勢に対して批判をしまくり、それを週刊誌側が内容を十分に検証せずに垂れ流すという構図ができあがってしまっているのではないだろうか。
今週の『週刊文春』は、貴乃花を聴取した外部理事の高野利雄危機管理委員長が、協会に対する報告がないのに、貴乃花の意見だと、いろいろな人がメディアでしゃべっているのはいかがなものかと発言したことに対して、
「まるで貴乃花親方がメディア操作をしているような印象を与える」
と批判しているが、私にも明らかに週刊誌が貴乃花側に操作されているように見える。
貴乃花よ、もはや沈黙は金ではない
私が想像するに、貴乃花にはマスコミ操縦に長けた人間が付いているのであろう。なぜなら貴乃花自身の肉声は、ほとんどが当たり障りのないものばかりだからである。
先のような問題発言が、協会や他のメディアから追及されても、「私は週刊誌にひと言もそんなことを話してはいない」と逃げられると考えているのではないか。
やり方が姑息(こそく)だと思うのは、私だけではないだろう。
貴乃花よ、もはや沈黙は金ではない。公の場に出て来て、自分の考えを堂々と述べ、どう相撲協会を改革するのか、白鵬を含めたモンゴル力士たちに「八百長」の疑惑があると考えるのなら、彼らにそれをただすべきではないのか。
なぜ白鵬は「品格がない張り手」を繰り出すか
初場所が始まる。これほど耳目を集める場所は、これまでなかったのではないか。出場が危ぶまれていた稀勢の里や、“カド番横綱”鶴竜も出場するそうだ。
だが、一番注目を集めるのは白鵬であろう。前人未到の1064勝という大記録を打ち立て、横綱としての勝ち星も歴代1位である。若乃花、栃錦、大鵬、柏戸、北の湖と並ぶ大横綱である。
失礼ないい方になるかもしれないが、彼が日本人だったら、間違いなく「国民栄誉賞」が与えられるはずだと、私は思う。その白鵬も32歳。年齢による衰えは隠せない。頂点を極めた横綱には引退の道しか残されていない。品格がないと批判されている白鵬の張り手は、そうした寂しさにあらがう彼の気持ちの表れかもしれない。
かつて、横綱・千代の富士を新進気鋭の貴花田(後の貴乃花)が破って引退に追い込んだことがあった。因縁話のようだが、今場所小結に昇進した貴乃花部屋の貴景勝が、白鵬に勝って「あんたの時代は終わった」と引導を渡せば、因果は巡るということになるが。