世界最高の権力者である米国大統領。その夫人は絶大な権力をもつ「王妃」です。重責がともなう立場ですが、トランプ大統領の夫人・メラニア氏が「ファーストレディなんかには絶対なりたくなかった」と考えていると報じられ、話題を集めています。それでは、なぜメラニア氏は離婚しないのか。在米ジャーナリストの高濱賛氏が考察します――。
現在の「ファーストレディ」であるトランプ・メラニア氏。2017年9月、キャンプデービッドにて。(写真=AP/アフロ)

「ファーストレディ」はいわば「王妃」の称号

日本でイバンカ・トランプさんが大もてだったのは、その容姿もさることながら「ファッション・ブランドをデザインする女性起業家」で、しかも「ファーストレディ」のように振る舞ったからでしょう。「ファーストレディ」は言ってみれば、「王妃」の称号なんですから。

「ファーストレディ」に正式な定義や役割といったものはありません。言ってみれば、大統領の補佐役として外国公賓接待や大統領の外遊に同行して友好親善促進役を務める「私人」です。ところが近年、社会福祉、女性地位向上といった活動を率先して行う「ファーストレディ」が増えています。

古くはエレノア・ルーズベルト夫人のように「世界人権宣言」の起草者と知られる「賢人」もいます。またジョン・F・ケネディ大統領夫人のジャクリンさんのように、流行の最先端をいくファッションを身にまとって注目された社交界の花もいました。

ヌードをさらけ出した史上初の「裸の王妃」

そして今、新しいファーストレディのメラニア夫人(47)は、外国生まれ、外国育ちにモデル出身ということもあって異色です。

大統領選中には若かりし頃(20代)のヌード写真が暴露され、米国民はあぜんとしました。大統領候補夫人の肢体がさらされたのはメラニアさんが初めてです。

ところが、次々と醜聞を撃破してきたドナルド・トランプ氏は少しも悪びれるところはなし。あれよ、あれよというまに大統領になってしまいました。そしてメラニアさんもファーストレディに。

億万長者に見初められた「シンデレラ・ストーリー」

そのメラニア夫人について「Vanity Fair」という月刊誌(日本でいうと「文藝春秋」のような雑誌です)が取り上げました。

「Vanity Fair」のオンライン版での見出し。

これまでにもメラニアさんについての記事はかなり出ています。しかし英語が母国語ではないこともあってか、メラニアさんの「肉声」といってもどこか、奥歯にものが挟まったような感じで、いったいどんな女性なのか、何を考えているのか、はっきりしませんでした。

スロベニア(旧ユーゴスラビアの一部)の寒村で生まれ、16歳までそこで過ごしました。18歳のときにモデルになろうと、イタリア・ミラノに行き、その後パリ、ニューヨークの活動の場を求めました。トランプ氏に出会ったのは28歳の時でした。年の差は24歳。義理の娘イバンカさんとは11歳違い。母子というよりも姉妹のようなものです。

ですから、熱愛の末、妻子あるトランプ氏を「略奪」し、「結婚」したなどとは思えません。万一のことがあれば、遺産の半分はメラニアさんに転がり込んできます。これから10年後、20年後にメラニア未亡人は何をしているのでしょう。別にファーストレディなんかにならなくてもよかったわけです。

遺産はほしいが、ファーストレディにはなりたくなかった、というのであれば、さっさと離婚するという選択肢もあるんじゃないか。なぜ愛のない結婚生活を続けているのでしょうか。